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空色少女 再始動編
335




真っ直ぐ紅奈が向かったのは、庭だ。

姫君の庭園。


創立当時、ボンゴレを支援していた姫君に感謝の意を示して創られた庭園。

姫君が愛していた庭園。


目を閉じて紅奈は空気を吸い込んだ。

太陽と草と花の香り。


目を開けば、眩いほど美しい庭園。

懐かしさが胸の奥で感情を膨らませる。


本物の庭園を見たから、よくわかった。
忠実に再現されている。


XANXUSがいなくとも手入れするものがいるらしい。


どこだろうか、と紅奈は周りを見回した。

前世の前世の記憶が甦りそうだ。


姫の命が絶えたあの樹を探した。

しかし記憶を頼りに辿り着いた先にあの樹はない。


代わりに在ったのはあのベンチ。


そのベンチに大きな樹があれば、城にあった姫君の庭園と瓜二つだった。


「なんで………肝心な場所に…ベンチ?」


あの樹の下で姫君が息絶えたから、それだけは再現できなかったのだろうか。

だがあの樹の下で、ジョットは幾度もローナと話をしたはずだ。
そしてあの約束をした。

最期に、誓った。


夕陽に染まる中で、庭園が見回せる樹の下。


何故他は忠実に再現しているに…。


(スクアーロに訊いてみるか)


もう一度庭園を見回してから、紅奈は駆け出す。

待っているスクアーロの元へ。


車に乗り込んでから紅奈はスクアーロに早速訊いた。


「ローナ姫?2代目が惚れてた?」

「そう、そのローナ姫が愛してた庭園をあの別荘に残してたらしいよ。初代ファミリーが。なにか知らない?」

「オレはぁ…2代目が惚れてて姫が死んだのを気に憤怒の炎が覚醒したことぐらいしか知らねぇぞ」


そうか。
情報ないのか。

ならあとはベルしかない。


「その姫がどうした?」

「いや、別に。急ごう。一応スクはヴァリアーに異変がないか調べて、あたしはベルをとっちめる」

「おう」











「ベルなら拗ねて部屋にこもってるよ」


屋敷に戻りベルを探しにいけば、マーモンと会ったので訊いてみればそんな回答がきた。


とりあえず部屋に行ってノックもせずに入る。


「ベール」


呼んでも返事はない。
しかしベルはちゃんといる。


黒と赤の家具や装飾の部屋。
布は切り刻まれているがそれはデザインらしく、散らかっているわけじゃない。


「ベル?」


ホラーチックな天蓋の下、ベルは寝ているわけではないのはわかった。
唇を尖らせたまま天蓋を見つめている。(目は見えないからそう見えるだけ)


「ベル、なに拗ねてんの?」

「………」

「…あたしを無視かぁ?」

「……あっち行け」

「なにそれ、キングに向かって」


やっと口を利いたかと思えば、あっち行け。紅奈は近くにあったクッションを放り投げた。

直撃したがベルは仕返しをせず顔を逸らすだけ。





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