空色少女 再始動編
334 疑惑
「いれた犯人は?」
「捕まえておろすか?」
「ベルなら問題ないが、未成年のヴァリアーに酒を外部が盛るのはヤバイだろ」
「そりゃ……そうだなぁ…。だがベルもちげぇと言ってたしアイツも飲んで酔ってたぞぉ」
紅奈に言われて、スクアーロはとんでもないものを見逃したかもしれないと顔をしかめた。
ベルの悪戯ならばいい。
それ以外ならば、悪巧み。何かの陰謀。
「あの場にいた奴らに酔って欲しかったみたいだな…。問題はなにがしたかったか」
紅奈は顎に手を添えて考えた。
酔ったのは紅奈とベルだけ。恐らく目的は達成していないだろう。
「待て、ベルがとぼけてるだけかもしれねぇだろ!」
「…そうだね。ベル達じゃないなら犯人をとっちめないと」
「ぜってぇベルだ!!だいたいオレ達を狙うなら料理になにかを盛る方が確実だろうが!酔っても泥酔する可能性は低いっ!盗みだとかなにか目的があったんだったら酒を盛るわけ…!」
「……目的は暗殺か?」
ベルであってほしいとスクアーロは叫ぶ。
そんな陰謀あってたまるか。
真っ向からぶった切ると、紅奈が一つの憶測を口にした。
「泥酔した挙げ句に殺しあわせたかったとか。ヴァリアーを潰したい誰かの安易な暗殺計画」
ニヤリ。
楽しげに笑う紅奈の言葉に悪寒が走ったスクアーロは急ブレーキを踏んだ。
「う゛お゛ぉおいっ!!それはどうゆうことだぁ!?」
「落ち着けよ、単なる憶測だ。ヴァリアーはクーデターの前科があるし、復活には賛成しない輩もいるだろ?そこでヴァリアーの誰かが問題を起こせばまたヴァリアーは永久的に活動停止どころか…ヴァリアーは消え去られかねない。もしもベルじゃなければ……ヤバイだろ?」
「っ!!」
悪戯ではなければヴァリアーを潰したい者の犯行。
「まっ、あくまで憶測だって。んな深刻な顔をするなよ、スクアーロ。とりあえずあたしからベルに訊いてみるから、お前は屋敷に異変がないか調べてみてよ。ルッスーリアとレヴィとマーモンにも声をかけて……あ、そういえばビデオ撮ってたじゃん。犯人映ってるかも」
紅奈は青ざめるスクアーロに明るく笑ってみせる。
ただの憶測で確証はどこにもない。
だがその憶測が正しければ、これは紅奈に任されたヴァリアーの崩壊の危機だ。
スクアーロは笑えない。
「もしも憶測が当たってたらどうする…?」
激情を秘めた声音でスクアーロは紅奈に問う。
スクアーロの気持ちを察して紅奈は少しだけ考えた。
「犯人を見つけてから、考える。…勿論牙を向いてるなら容赦はしない」
ニッと強気な笑みで答える。
「…チャンスだ」
「チャンス…?」
「ああ…チャンスだ」
これは絶好のチャンスかもしれない。
だからこその笑みだ。
「あっ!」
珍しい声を紅奈が上げたため、スクアーロは発進させた車をまた停めた。
「ここ、XANXUSの別荘の近くだよね!」
「あ?…ああ…」
「行って」
「はぁ!?犯人を見付けるのが先だろ!」
「すぐ済ませるから!」
ただをこねて紅奈は急かす。
いつもの威圧感で従わされる前に従うべきだ。
スクアーロは仕方なく車を向かわせる。
車を降りてXANXUSの別荘を見上げた。
門が閉まっている。
「う゛お゛ぉおい、鍵あんのか?そもそも今もXANXUSの物とは限らねぇぜ」
「10代目になったら貰う約束だから、まだXANXUS所有のはず」
「だから9代目の所有物っぶ!?」
紅奈は車のボンネットによじ登り、それからスクアーロの背中を踏みつけて門を飛び越えた。
そのまま紅奈は華麗に着地。
天から授かった運動神経なり。
「って!う゛お゛ぉおい!何故オレを踏み台にしたぁ!?」
わざわざスクアーロを踏まずとも紅奈なら車を土台にすればいけたはずだ。
「スク。すぐ済ませる、待ってろ」
紅奈はさっさと走って行ってしまった。
何故だ、何故いつもオレはここで待たされるんだ。
スクアーロは門の前に突っ立った。
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