空色少女 再始動編
333
「スクアーロ」
〔紅奈ぁ!?無事かぁ!?〕
「当たり前じゃん。ただ遊んでただけ。今戻るから、大人しく待ってて」
簡潔に話して紅奈は電話を切り、ディーノに携帯電話を返す。
「え?か、帰るのか!?」
「…ええ」
「会うんじゃないのか?友達に」
「……何処にいるかわからないから、会えそうにない」
先を歩く紅奈。
かつての住みかに彼らはいない。
結局、あの場所で待つしかないのだ。
待ち続けるしかない。
「紅奈。なにかを残したらどうだ?」
ひょこっとディーノの肩から出てくるリボーンが言う。
「紅奈が待っていた証拠だ」
それならばもう用意した。
紅奈は林檎を手に持つ。
赤く熟したその林檎を紅奈は待ち合わせ場所に置く。
また会えますように。
そう祈った。
「う゛お゛ぉおいっ!!跳ね馬!懲りずにまた紅奈を誘拐とはてめえ喧嘩なら買うぜぇ!!」
「スク。帰るぞ」
「待て!コイツをおろしてか…」
「返事は…?」
「っ!!、Si(ハイ)!!」
ディーノに飛び掛かろうとするスクアーロの義手を掴んで止める紅奈が苛ついた表情を向けたためスクアーロは直ぐ様踵を返した。
「ハンバーガーとエスプレッソ、ごちそうさま」
「え、あ、ああっ!」
「またな、紅奈」
スクアーロの義手を握ったまま並んで歩きながら、一応紅奈は挨拶をする。
ディーノがブンブンと手を振るとリボーンが意味深に言った。
また会うのは必然のようだ。
「イタリアに来る度、なんで失踪するんだぁ?」
「失踪じゃない。マーモンに言ったじゃん」
「今日稽古つけろって言ったのは忘れたのか!?」
「忘れてない、お前が迎えに来なくてもこの時間に戻ってた」
スクアーロの車で屋敷へと戻る。
本当に過保護さと大声という欠点がなければ、大好きなんだけどな。
じっと紅奈はスクアーロを見上げた。
「……なんだよ…」
前を見つつ運転するスクアーロはチラチラと紅奈の視線を気にする。
「別に」
「………」
「なに?」
今度はスクアーロが見てきた。
「いや…その…だな……」
「ゴニョゴニョすんな、らしくない。はっきり言え」
「っ!昨日のこと!…覚えてるかぁ!?」
急かされてスクアーロは勢い任せに訊く。
昨夜のこと、記憶にあるのかどうか。
ドクドクと高鳴る心臓。
スクアーロはギュッとハンドルを握り締めた。
「昨日?夕食から記憶ないけど…なんかあった?」
ガクリ、とスクアーロは項垂れる。
(……やっぱり覚えてねぇのかっ!!!!)
「前向いて運転しろよ。てかなんでお前はベッドの隣に座り込んでたんだ?」
ショックで俯いてしまうが紅奈を乗せて運転しているため、顔を上げて前を見た。
酔った紅奈の本音を聴いたら、一人にできなくなったなんて言えない。
酔って本音をぶちまけたことを知った紅奈の反応も気になるが、すごく自分からは言えない。
「…昨日の夕食時に誰かがオレンジジュースにウィスキーをいれたんだぁ…それで酔ったお前を介抱してたんだ」
「………まじか?記憶なくすほど酔ったのは初めてだ」
「……前にも酔ったのか!?飲酒常習犯か!?だから身長がのび」
「アホかっ。身長は成長期前だからに決まってるんだろ!アホかっ!」
紅奈の蹴りがスクアーロの顔に決まる。
現世での飲酒は初めてに決まっているだろう。
記憶がないのは酔ったせいだということなら納得だ。
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