[携帯モード] [URL送信]

空色少女 再始動編
332




「紅奈!お待たせ!」


そこにディーノが戻ってきた。

要求通りのハンバーガーと林檎。


朝食と昼食を合わせての食事だ。
新鮮なトマトとキャベツに肉汁が染みでるジューシーな肉。

うん、美味い。


リボーンもディーノも同じハンバーガーを食べた。


(ゴミ捨て場の隣なんだけどね)


前もそうだった。
赤い林檎を手にして思い出す。
初めて会ったあの日。


「紅奈。一体ここで誰を待ってるんだ?」


紅奈の機嫌が幾分か良さそうだったため、ずっと思っていた疑問をディーノはぶつけた。


「希望って名前の奴を待ってるわけじゃあ…ないよな」

「きぼうって名前の日本人は多分いないわ」


以前紅奈はここで希望を待っていたと答えたのだ。
よく覚えていたな、と思いつつも紅奈は怒らず質問に答えた。


「友達を待ってるの。時間も日にちも指定してない……でもここで待ち合わせしてる」

「時間も日にちも指定してないって…。電話とか、直接会いに行けないのか?」


ディーノ達には関係ないことだが、ディーノはお節介を焼く。

紅奈はじっとディーノを見上げた。

ギクリ、とディーノは震え上がる。


(また怒らせたか…!?)


すると紅奈が立ち上がり近付いてきた。ディーノは強張る。

じっとただ見上げてくる紅奈はやがて口を開いた。


「鬼ごっこしよう」

「……へっ?」

「タッチ。ディーノ、鬼」

「え?…ええっ!?」


ディーノの肩をタッチしてから紅奈は走り出す。

リボーンまでもがいなくなり、置き去りにされたディーノは慌てて追い掛けた。


そうだ。
会いに行けばいいじゃないか。

ディーノに言われて漸く気付いたなんて、アホか。


紅奈はうろ覚えの道を駆け巡る。
彼らと鬼ごっこをして走り抜けた路地。
ディーノを撒くくらいの速さで紅奈は足を動かしていった。

道のりと一緒に、彼らの声も甦る。


追い掛けて逃げて捕まえて。
ただそれだけの遊びでも、なんだか楽しかった。


疲れ果てて辿り着いた建物に漸く辿り着いたが、そこはもう廃墟ではなかった。

誰かが買ったのだろう。
薄汚れていた建物は綺麗にされ、看板が置かれていた。

店になったようだ。


乱れた呼吸のまま紅奈はそれを立ち尽くして見上げた。


「タッチ!!…ゼェハァ…やっと捕まえた…」

「…なんで貴方、ボロボロなの」

「これはその……何回か転んで…」


肩を叩かれ振り返れば、まるで人ごみに揉みくちゃにされたかのようにボロボロなディーノ。
鼻は顔面から転んだ跡。

どこまでドジなんだ、コイツは。
と紅奈は呆れる。


そこでディーノの携帯電話が鳴った。


「ロマーリオ?」

う゛お゛ぉおいっ!!

「いっ!?」


ロマーリオだと思い携帯電話を耳に当てたディーノは、轟く声が貫通して震え上がった。

それは紅奈にも聴こえた。


「スクアーロ?」

てめえ!!また紅奈を拐いやがって!何処だぁ!?今すぐ返さねぇと…てめえの部下を三枚におろすぞう゛お゛ぉおいっ!!

「ロマーリオを!?ちょ、落ち着け!」

「かして。あたしが話す」


どうやらスクアーロは紅奈を取り返しに来たらしく、見付けたロマーリオを取っ捕まえたらしい。

部下の危機にディーノは慌てた。そこに紅奈で手を差し出す。





[*前へ][次へ#]
[戻る]

[小説ナビ|小説大賞]