空色少女 再始動編
330
「あっ」とそこで紅奈は声を漏らす。
きょとん、とディーノは首を傾げてどうしたのかを訊いた。
「朝御飯食べてないから、お腹空いた」
「んな!?それ早く言えよ!待ってろ!」
聞くなりディーノはロマーリオの車に向かって走った。かと思いきやUターンして戻ってきた。
「なに食べたい!?」
「…要求したものを持ってきてくれる?」
「もちろん!」
「じゃあ……ハンバーガーが食べたい。肉汁が出るような厚みのあるお肉にトマト、キャベツ、それにチーズ。余計なドレッシングやソースは入れちゃ嫌。ピクルスもだめ。大きさはディーノの拳ぐらいで、あと真っ赤な林檎一つよろしく」
「!?」
「じゃあオレも同じやつな」
お言葉に甘えて今食べたいものを要求した。
細かい注文がくるとは思いもしなかったディーノは戸惑いつつも頭で覚えようとしながら車に向かう。
「今日はいつまで待つんだ?」
「…………今日は長く待たない」
リボーンの問いに紅奈は顔を上げて答えた。目に映るのは、スカイブルー。
「ちょっと待ってろ」
その声にリボーンに目を向けると、リボーンは何処かに歩き去っていった。
一人残る紅奈。
結局、一人にしてもらえた。
左右を見ても、待ち人の姿は見当たらない。
膝を抱えて俯く。
前みたいにうとうとしているうちに来ないだろうか。
骸は…。
骸は、まだ待っていてくれているだろうか。
もう待つのはやめてしまったのだろうか。
早くしないと骸は、骸達は罪を積み重ねてしまう。その前に手を差し出す。
紅奈が無の闇の中に囚われていた時、ジョットが手を差し出したように。
闇の中を無我夢中で突っ走るのをやめさせないと。
(……今のあたしには、ちゃんと希望がある)
闇の中にいる。
けれども、ちゃんと前には希望の光が射し込んでいる。
それに向かって突き進む。
立ち止まる。そんな選択肢はない。
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