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空色少女 再始動編
325 本音の本音




紅奈は強く、スクアーロの手を握りしめる。


「聞いて…スク」

「…!」


見上げる紅奈の瞳を見たら、なにも言えなくなった。


何かを伝えたそうな瞳。

そして泣いてしまいそうな表情。


「……失ってしまったかと…思った…」


震えた声で紅奈は、スクアーロの頬をもう片手で触れた。


笑いあった時間も……誓いも約束も……っ絆も……全てを失ったと思った…


ポタ、と雫が落ちてシーツに染み渡る。

頬に触れる紅奈の手が、震えるのがわかった。


お前達を失ったかと思ったんだ……すごく、怖かった…


胸の奥が、締め付けられる。

スッと紅奈がスクアーロの頭を引き寄せた。


「紅奈っ……」


スクアーロは握られる紅奈の手を握り返す。


「…すまないっ……」

「………ううん」


首を振る紅奈。

顔を見れば、微笑んでいた。


純真無垢な微笑み。


「今は居てくれる……失ってない…」


間近でみたその笑みと瞳が、綺麗だった。


潤んだ瞳は変わらない奥まで澄んでいて、見透かすよう。

微笑みは穏やかで安堵していた。


「ありがと、スク。あたしを選んでくれて。ありがと、スク。あたしのそばにいてくれて。ありがと、スク」


紡ぎだされた言葉は感謝の言葉。


スクアーロに向けられたありがとう。


あたしに本物の忠誠を誓ってくれて


眩しいくらいの笑みで言う紅奈。


涙が込み上げたが、スクアーロは堪えた。


「バカかっ………なんでこんなっ…なんでもない日に………勿体ないだろ!そうゆうのはっ……就任式とかっ役に立ったときとかっ……」


どうしようもなく声が震える。

情けない顔だけは晒さないように伏せたが、頭を撫でられて紅奈を見た。


ニッと笑っている。


「あたしの本音、伝えたかったんだ」


自信家で挑発的な笑みでクシャクシャと頭を強く撫でられた。


「………お前にはホント、敵わねーなぁ……」


シーツの上に頭を埋めてスクアーロは洩らす。


「なんでそんな嬉しすぎる言葉ばっかかけんだ……なんでそんなにオレを惹き付けんだ……」


手を握りあったまま。


これ以上魅了してどうすんだ………これ以上惚れさせんなっ……!


顔を上げて紅奈を見た。


紅奈は。


寝息を立てて眠っていた。


「………酔ってたんだった…!」


ズボッとスクアーロはまたシーツに顔を埋める。

今のは酔っていたから紅奈がぶちまけた。
あのウィスキーの量なら、きっと明日は記憶に残っていないだろう。

残ってほしい。


酔っていたとしても、今のは紛れもない紅奈の本音。


伝えたことを、覚えていてほしい。

伝わったことを、覚えてほしい。


「ああ──────オレの忠誠は本物だぁ、紅奈…」


否。


「ボンゴレ十代目」








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