空色少女 再始動編
319
それに向かって微笑んだ。
「じゃあ、ここで飼ってね」
「は!?ここで!?」
「あたしの家で飼えるわけないじゃん」
くるりとスクアーロを見上げて言う紅奈に、肝心なことに気付いた。
紅奈の住むあの家でライオンを飼えるわけがない。
犬みたいな姿をしていてもライオンとなる。
ベルが紅奈にはなついていたと言うからなんとかなると思っていたが。
「ここでは飼えないよ、だって僕達になつかないんだからさ」
ついてくるくせに、ライガーは牙を剥き出しでそれは大変だった。
誰にも吠えて噛み付こうとしたため、ずっと部屋に閉じ込めていたのだ。
見ての通り、紅奈にはなついている。
というか紅奈にしかなついていないのだ。
「確かにこの広い屋敷なら飼えなくもないけど…これじゃあ紅奈ちゃんがいないと」
「!、紅奈も一緒に」
「それはない。」
ライガーをダシに紅奈をヴァリアーに留めようとしたが、即座に一蹴されスクアーロは項垂れた。
「ほら、あれだよ。それならXANXUSだと思えばいいさ」
「は?」
「似てるじゃん」
紅奈がライガーをマーモンに差し出せば、ライガーは爪を出してマーモンを引っ掻こうとしたためマーモンは慌てて避ける。
「XANXUSの代わり。扱い方は一緒だ」
紅奈はマーモンが退いたそこにライガーを置く。
…………………たしかに。
と納得してしまった。
「ボスの代わりだと!?貴様!愚弄する気か!」
「暫く会わないと扱いがわからなくなるじゃん?なぁ?名前はXANXUSにしとく?」
「…奴が戻ったらぶちキレるぞ」
「だろうな、このビデオを見たアイツの顔を早くみたいな」
ククク!と意地悪く笑う紅奈を見て、スクアーロ達はゾッとした。
XANXUSに果たしてこのビデオを見せていいのかどうか。
再会した二人は一体どうなるだろう。
一触即発?
「飼えよ、ちゃんと」
「…だが」
「返事はイエスかハイかシーだ」
「…………Si(シー)」
拒否権なしだ。
ヴァリアーはこのなつかない猛獣を飼わなくてはならない。
「名前は?」
「XANXUSじゃだめ?」
「やめとけぇ」
「んーじゃあ……ベスター」
椅子の背凭れから言うスクアーロからホワイトライガーに目をやって、紅奈は指先で頬を撫でてやった。
気持ち良さそうにライガーは目を閉じる。
本当に紅奈にはなついているようだ。
紅奈には。
「あたしはいてやれないけど、このお兄さん達に遊んでもらってねー?」
紅奈は猛獣の扱いが上手いらしい。
XANXUSをも手なづけていただけはある。
ヴァリアーすらも今や猛獣だ。
それを紅奈が手なづけている。
凄腕猛獣使い。
「で、もう食べてもい?」
「ああ」
「ベスターの分も」
「……う゛お゛ぉおい!生肉持ってこい!」
お預けされたご飯にやっとありつける。
ベスターを下ろして、食事をした。
ベル達もよっぽど腹を空かせていたらしく、がつがつと皿の上の料理を平らげていく。
「スクアーロ。明日一日時間がある、稽古しよう」
「ぶっ!」
「……お前達はきれいに食えないのか」
「わ、悪い……」
唐突に言い出すものだからスクアーロは口の中のものを吹き出してしまった。
勢いよく食べているせいでテーブルは食べカスが散乱。まるで母親に食べさせてもらっている赤ん坊のテーブルの上だ。
赤ん坊のマーモンはきれいに食べているが。
「一日って…大丈夫なのか?家光は」
「一日なら大丈夫そうよ」
「そうか…。かんかんだったぜぇ…次来るのは難しそうだ」
「なんとかするさ。…ベスターのこと話せばいけるかも」
「紅奈ちゃん、大変ねぇ」
「休みはこっちに来れるようにする。他は任務のない時に適当に来て」
「それって僕とルッスーリアもかい?」
「気が向いたらでいい。あたしが呼んだら即来てもらうけどね」
「呼ばれたら来いと……」
「あら?異論がある?」
「んまぁ、呼ばれたらすぐ会いに行くわ!」
(飛行機代が……)
ルッスーリア達と今後について話をしながら、紅奈はゆっくりと味わって食べた。
二日もまともな食事を摂っていなかった腹に、いきなり詰め込めばリバースするからだ。
もう慣れっこである。
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