空色少女 再始動編
318 祝い
「まー、探し回ったが…すぐに跳ね馬と会ったからな……チッ!なんでまたあの野郎が出てくんだ。拉致ったかと思えば病気にして返しにきやがって…次会ったら切り落としてやる!!」
「こらこら、同盟だぞ。同盟」
殺意に燃えるスクアーロにとりあえず止めておく紅奈。
「聞けばアイツ、お前を轢いたらしいじゃねぇか!!?」
「あー……あれだ、あれ。ほら、傷ない。……あたしだって言ったの?」
「は?言ったら…」
「はぁああ!?てめっ跳ね馬!!今紅奈を轢いたって言ったのか!?」
「へっ?紅奈?…ち、ちげーよ…黒髪のこれくらいの背の…」
「それが紅奈だぁああああっ!!!」
「跳ね馬は失神した。」
リボーンが心配した通りになってしまったようだ。
まぁいいか、リボーンに頼まれた通り紅奈からは言っていない。
「これもう同盟破棄じゃね?次期ボス轢いたんだぜ」
「そうだね、それ相応の報復をしなきゃね」
「まぁ!キャバロッネと戦争ね!」
「う゛お゛ぉおい!跳ね馬の首はオレがもらうぞぉ」
「やだ、早い者勝ちだし」
「そうだよ、殺った者勝ちだよ」
「んまっ!負けないわよ!」
「こらこら、なに勝手に弔合戦しようとしてんの?お前らが騒ぎたいだけだろ。つか腹へったってば」
勝手に戦争をやる気になっているスクアーロ達に紅奈はもう一度飯を出せと急かした。
本気混じりの冗談をやめてスクアーロも空腹だと思い出してキッチンに向かう。
紅奈が止めなければ本当にやっていたかもしれない荒くれ集団なり。
「おー。豪華じゃん、いただきまーす」
並べられたのはパーティーに出される晩餐の如く豪華な料理。スクアーロがシェフに作らせて持ってこさせたものだ。
盛り付けられたサラダは芸術みたいで、七面鳥は肉の焼けたいい香りが漂う。
「う゛お゛ぉおい!待て!毒味がまだだぁ」
「信用できないシェフに作らせたの?空腹がピークなんだけど」
がしっとスクアーロが後ろから掴み、食べるのを阻止する。
目配せをしていて、ベル達が先程からこそこそしていた。
「?」
首を傾げる紅奈。
運んでくるついでに連れてきたレヴィはビデオカメラを持って撮影中だ。
「なにソワソワしてるの?」
びく、とマーモンが震え上がった。
やっぱり無理だよ!とマーモンが紅奈を押さえるスクアーロに視線を送る。
いいから準備しろ!とスクアーロが首を振った。
紅奈の前から料理が退かされ、マーモンが目の前に立つ。
そんなマーモンの後ろに、気配を感じた。どうやらなにかをマーモンが幻術で隠しているようだ。
紅奈はそこに手を伸ばした。
「ちょ!だめ!危ない!」
「おいっ!」
マーモンが叫ぶ。
スクアーロが止めようとしたが、遅い。
まるで見えない壁紙を突き破ったかのように白い物体が現れた。
白い物体ではない。
白い生き物。
それがマーモンを飛び越えて紅奈に飛び付いた。
真っ白なライオン。いや、違う。
真っ白で虎模様のあるホワイトライオンとホワイトタイガーの混沌種・ホワイトライガーの子供。
甘えるような声で鳴いて、青い瞳でホワイトライガーは見上げた。
あの時の子だ。
「ベル、連れてきたの?」
「ちげーよ、コイツがついてきたんだし」
ベルはニヤニヤと楽しげに笑って答えた。
「まー…あれだ。問題はあったが、紅奈の任務初参加の…報酬だぁ!受けとれ!」
「んふふ♪」
「そうゆうこと!」
「……」
スクアーロが紅奈の肩を叩くとライガーが噛み付こうとしたため、スクアーロはさっと手を引っ込める。
初任務ならまだしも、ただの任務初参加で何故こんな祝いじみたことをするのだろう。
紅奈は不思議に思い、テーブルの料理を見た。
(嗚呼─────口実か)
頬杖をつくルッスーリア。宙に浮くマーモン。身を乗り出すベル。後ろに立つスクアーロ。
これはささやかな祝い。
紅奈との仲直りが出来た祝いなのだろう。
あからさまにしないのは、たった一人が欠けているからだ。
紅奈はビデオカメラに目を向ける。
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