[携帯モード] [URL送信]

空色少女 再始動編
316



「……今何時?」

「四時だ、夕方の」

「夕方?あたしまる一日寝てたの?」


紅奈は自分に呆れてベッドにパタンと横たわる。


「いや、二日だ」

…二日!?


ギョッとして飛び起きた。
シャマルの嘘でも冗談でもないと伝わり、呻いてまた倒れる。


二日。
その二日でスクアーロ達と稽古がしたかった。戻ってこい、あたしの二日間。


病弱の身体を恨めしく思う。


「じゃあオレはこれで失礼する。かわいこちゃんを待たせてるんでな」

「先生。父親にあと二日は安静にしなきゃいけないとかなんとか言っといてくれない?」

「はぁ?」


紅奈が白衣を掴んで頼み込んだ。


「お願い、先生」


ぐいぐいと腕を引く紅奈が猫なで声を出す。
そこまでお願いされては断れないが、医者として患者の両親に嘘をつくのは如何なものか。


しかもここはヴァリアーの屋敷。
危ない野郎どもの中に紅奈を一人置いておくのは、家光じゃなくても心配だ。


(だがあの金髪と銀髪はお嬢ちゃんの友達だしな…あの様子からして大丈夫…だろう)


以前もヴァリアーの屋敷に泊まっていたことは家光から聞いていた。


「わかった。だが一日だけだぞ」


シャマルは仕方なく笑って頭を撫でてから、部屋を後にする。


一日だけか。

精一杯やるしかない。
実践は味わえたのだから一日だけでもスクアーロ達に相手してもらおう。


「…なんでこそこそ入るの?マーモン」

「ムッ…」


部屋にマーモンの気配を感じて問う。
幻術で身を隠して部屋に入ったマーモンは潔く姿を現した。


「もう大丈夫そうだね」

「ええ。…何か用?」

「見舞いだよ、って嘘は通用しないよね。君、アルコバレーノのリボーンに運ばれたそうじゃないか」

「リボーン?」


ベッドにぱふんと座るマーモンが単刀直入に訊いた。

リボーンが運んだのか?
確かに倒れたとき、リボーンがそばにいたが。
彼が車に運んで自分で運転してここまで来れるのか?


疑問に思ったが、マーモンは訊く。


「僕のこと、話してないだろうね?」


なるほど、それを心配して来たのか。


「話してないよ。心配しなくていいわ」

「…そう、ならいいよ」


それだけ確認しにきたらしい。
マーモンはベッドから降りようとした。
だが紅奈がキャッチ。


またしても紅奈の膝の上に乗せられた。


「マーモン、頼みがあるの」

「頼み?」

「そう。マーモンにしか頼めないの」


紅奈は穏やかに微笑んだ。


「幻術であることをしてもらいたんだ、いいかな?明日、或いは日を改めて」

「……まぁ、その頼みくらい無料で引き受けてあげるよ」


プイッとマーモンはそっぽを向く。
そんなマーモンを紅奈は頭を撫でてやった。







[*前へ][次へ#]
[戻る]

[小説ナビ|小説大賞]