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空色少女 再始動編
315 悪夢病








目を開いたら、窓から朝陽が射し込んでいて眩しかった。

重い右手を見てみれば、ベッドの上に踞ったシャマルが握ったまま眠っている。


身体が怠い。


「…シャマル」


起き上がってシャマルを呼んで起こす。


「ん?…おー、お嬢ちゃん。大丈夫か?怖い夢はみずに済んだか?」

「……えぇ…」

「熱も下がったな」


眠そうな顔で起き上がったシャマルは紅奈の額に手をやり熱を確認する。


「なんであたしが怖い夢を見たってわかったの?」

「それはお嬢ちゃんの今回の病気は、悪夢病っつー熱に魘されながら悪夢を見る病気だからだ」

「悪夢病…?」

「ああ、ちゃんと病魔は取り除いた」


薬のようなカプセルをシャマルが見せるが、紅奈はいまいちわからず首を傾げる。

まぁ治った、とだけ理解しておこう。そう自己判断した。


「綱吉は?」

「両親のとこにいる」

「…両親に話したの?」

「当たり前だ」

「……」


それを聞いてじと、と睨むようにシャマルを見る紅奈。
どうやらまずかったらしい。


「しょーがないだろ、お前さんになにかあってからじゃあ遅いんだ。この病魔は死に至るんだ、オレがいなきゃな今も悪夢に魘されて叫んで死んでたかも」

「…あたし叫んだの?」


紅奈の怒りを静めようとシャマルは説明をしておく。
すると紅奈が目を丸めて訊いてきた。


「は?」

「寝言は?叫んでない?泣いてない?」


妙なことを訊くと思った。
だが紅奈は真剣に問い詰めてくる。


「叫びそうで…でも声がでなかった感じか?寝言も聞き取れなかったが…」


紅奈の反応を伺いつつ、シャマルは慎重に答えた。


「…それを、スクアーロ達は見てた?」


何故そんなことを問うのかシャマルにはわからなかったが、言葉を選ぶべきだと思い、そして答える。


「奴等は野郎だろ?オレは野郎を診ないからな、移っても治してやらないと部屋に入るのは禁じてた。だから見てないぞ」


その回答は正解だったらしく、紅奈は安堵の息を洩らす。


(……なんなんだ?)


紅奈のこの反応といい、スクアーロ達の態度といい、理解できない。

9代目直属暗殺部隊であるスクアーロ達は紅奈の心配をして彷徨いていた。
何度も様子を訊きに訪れていた。

戦闘マニアで殺戮を好む狂った集団と聞いていたのに、たった一人の少女を心配している様子は異常に感じた。

紅奈は見られなかったことに安堵の息を洩らす。まるで弱さを見られなかったことに安心しているようだった。







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