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空色少女 再始動編
314



飛び起きた。
息を荒げて周りをみる。

暗い部屋。
ヴァリアーの屋敷の客室だ。

静寂が不気味で、不安にかられた。


ベッドから降りたが、足が覚束ない。
倒れて手をつくが、その腕が震える。


なんとか立ち上がって、廊下を出た。

ひんやりした空気に包まれた。
暗くて、誰もいない。


誰かを呼んだつもりだったが、声がでなかった。

壁に沿って歩く。
平らなはずの床が歪んでいるように感じる。


辿り着いた部屋に入り、その部屋の主を探した。


いるわけなんかない。

いるわけなんかないんだ。


天蓋のついたベッドに力尽きて倒れる。

さっきのは夢だった。

ただの夢。


夢だ。


「紅奈!」


名前を呼ばれる。


「おい、紅奈!なんでここに…」


この声は、スクアーロ。


スクアーロが駆け寄り、顔を覗いてくる。


スクアーロだ。


スクアーロが、いる。


「なにやってる!部屋から出すなと言っただろ!」

「紅奈が部屋を出てここにきたんだ!オレが運ぶっ」

「移るからお前は出てろ!」


続いてきたのは、シャマル。

スクアーロの肩を掴み、シャマルは追い出した。


「スク……」

「その熱でよく歩けたな…。移ると厄介な病魔だから、もう出歩くなよ。寝てろ」


扉を閉めたシャマルは布団をかける。


「寝たくない……」

「大丈夫だ。…悪夢は見ない」


そう言ってシャマルはあたしの手を握り締めた。


「……あたし……スクに…」


言っておかなきゃいけないことがある。


「先ずは眠れ」


シャマルは額をそっと撫でて微笑んで言った。

瞼は重くなり、あたしは目を閉じる。










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