空色少女 再始動編
313
見覚えのある天蓋。
横たわるベッドから周りを見ようと寝返りをうつ。
ここはXANXUSの部屋だ。
隣には───────XANXUSが座っていた。
なんで?そう出た疑問に疑問が沸いた。
なんで?って何が。
XANXUSが手を伸ばしてあたしの頭に置いた。
何を考えているか読み取れない目をしてあたしを見下ろす。
するとぐしゃぐしゃとあたしの髪を乱すように頭ごとそのゴツゴツした手で撫でてきた。
「うにゃ!こらっちょっ!」
なんだか嬉しくてつい笑ってしまう。
だけどあたしがXANXUSの手を掴む前に、頭の上の感触が消えた。
顔を上げる。
隣には、誰もいなかった。
「XANXUS…?」
呼んでも返事がない。
心音が乱れていくのがわかった。
この胸騒ぎはなんだ。
この不安はなんだ。
これはなんなんだ。
ベッドから降りて、あたしは扉を開いた。
その先にあったのは────────変わり果てたボンゴレの本邸。
襲撃の傷跡、火薬の香り、黒い煙。
倒れてしまいそうなほどの気持ち悪さを覚えた。世界が歪む感覚がする。
違う。
何かの間違いだ。
そんなはずはない。
そんなはずはないんだ。
「違う…」
そんなこと、ない。
だって。
「……オレのボスだ」
そんなはずはないんだ。
「オレは本物だと。裏切らないと。誓いを形にして紅奈に伝いたいんだ。オレは、お前についていく。言葉だけじゃあ足りねぇ……だからだ」
だって。
「オレのキングでいてよ……オレを捨てないでっ……紅奈…!」
だって。
そんなはずはないんだ。
あたしは立ち上がる。ぐらりと歪む感覚がおさまらないが、走って屋敷の扉を開けた。
「XANXUS!!スクアーロ!!ベル!!」
喉に痛みを感じるくらい声を張り上げて叫んだ。
「XANXUS!!XANXUS!!」
顔を出して嘘だと言ってくれ。
「スクアーロ!!」
違うと言ってくれ。
「XANXUSぅ!!」
否定をしてくれ。
シナリオは変えられると。
あたしは君達を救えると。
あの時間をなかったことにしないで。
笑いあったあの時間。
あの空間。
明るくて温かいあたしの本物。
奪わないで。
あたしの本物の時間。
†悪魔病
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