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空色少女 再始動編
308



──────バレてる。


焦った。
やばい。やばいぞ、これ。

ヴァリアーのコートに変装。
言い訳できねぇぞこれ。


「公表したらさ、紅奈。多分、綱吉と引き離されるんじゃね?」


綱吉と引き離されるなんて冗談じゃないっ!


リボーンがいない隙に逃亡を決意。
その矢先にリボーンは戻って来てしまった。


コクのある珈琲の香りと共に。


「エスプレッソだぞ」


そう言って差し出したのは、一つのコーヒカップ。
紅奈は目を丸めたが受け取る。


「あったまるぞ」

「…ありがと」


冷えていた手にカップは少し熱かったが、次第に手は温まってきた。

濃い色のエスプレッソを見つめながら、紅奈は一口飲んだ。

苦味が広がり、顔をしかめた。

もう一度の飲めば、少し慣れ苦さの中の甘さがわかる。


「…子供が飲めるものじゃないと思ったけど、意外と飲めるね」

「本当はもっと濃いぞ。口にあうように薄めて砂糖をいれたんだ。生憎ココアがなくてな」

「…ふぅん」


紅奈はまた飲む。
身体の中から温かさが広がる。

ホッと息をつく。


「なんであたしだってわかっててディーノに言わなかったの?」

「紅奈を轢いたって知ったらディーノの奴、卒倒するからな」

「?、別に怪我してないのに」

「まぁ、黙っててやってくれ」


リボーンも自分で淹れたエスプレッソを飲みながら紅奈に問う。


「なんでそんな格好してるんだ?」


ギクリ。
落ち着け。まだ大丈夫だ。
任務に参加していたなどまだ一言もいっていない。
ディーノが一方的に言っていただけだ。


「スクアーロの趣味。」

「………そうか」


甘んじて汚名を被ってくれ、スクアーロ。


「はぐれちゃって…」


ベルと。


「よく覚えてなくて…」


帰り道が。


「気付いたら、車に轢かれてた」


嘘にならない程度に紅奈は答えておいた。

「そうか」とリボーン。


「旅行か?」

「うん。家族とね。両親は別だけど」

「別?」

「両親は夫婦旅行。父親が家をよくあけてるからお母さんといる時間を増やしてあげてるの。あたしと弟はスクアーロ達が面倒みてくれるから」


話が逸れたので紅奈はペラペラと喋る。

父親。お母さん。
紅奈が父親である家光をよく思っていないことはよく伝わった。


「夫婦の時間は大切だもの」

「紅奈はよく気遣うんだな」


リボーンは紅奈が不快にならないように父親の話を避けて誉める。


「家族は大事だもの」


飲み終えたカップを置いて紅奈は答える。

矛盾した答えだったが、しかしそれは紛れもない紅奈の本音であった。


紅奈は、家族を想っている。

大事に想っている。





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