空色少女 再始動編
305
「……まじかよ」
「……まじだな」
二人が目の当たりにしたのは、二匹の猛獣だった。
紅奈の前にはホワイトライオン。子供ではなく立派な鬣を生やした大人のライオンだ。
ベルの目の前にはホワイトタイガー。こちらも当然の如く大きな身体をしたタイガーだ。
二匹とも歯を剥き出しに睨んでいる。
ガルウウッ!
吠えた。
思った以上に勇ましく、気圧される。
ピカ。屋敷に明かりがついた。
騒がしくなる。
「…ヤベ」
紅奈とベルは同時に呟いてから、来た道を駆け出す。
スクアーロの心配が実現してしまった瞬間だった。
(ごめん!スクアーロ!)
こればっかりは仕方もん。
屋敷のセキュリティのためにホワイトライオンとホワイトタイガーを番犬代わりに置かれている情報がないせいだもん。
ごめんだもんっ!
「殺られる前に────殺れだし!」
「バカ!やめろ!」
猛獣との鬼ごっこは勝敗がないと悟ったベルが、息の根を止めようとナイフを取り出した。だが紅奈が拒否しベルの首根を掴む。
紅奈が走行したままのため、ベルは首に紐が巻き付きそのまま引っ張られるように倒れた。
タラッ。
ナイフにつけられたワイヤーがベルの手を切りつけ、血が溢れ落ちた。
「あ゛はー血だぁ…!」
「今トリップすんなぁあっ!!」
次から次へとトラブル発生。
もう一度、紅奈は心の中でスクアーロに謝罪した。
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