空色少女 再始動編
304 無防備な笑顔
「可愛いっ…!」
むぎゅっとホワイトライオンの子を抱く黒い少女。対照的だが、愛くるしいさは共通していた。
なぜなら紅奈はこれ以上ないくらい、無邪気な笑顔を溢していたからだ。
ベルは心の中で叫ぶ。
かわええええええっ!!!
紅奈の方が可愛いすぎる。
演技で振り撒いていた笑顔よりもハワイで見せてくれた笑みよりも、何倍も無邪気でキラキラ効果がすごい笑顔だ。
ドツボに入って癒され無防備なほどに無邪気な笑顔が、ベルのハートを射止める。
紅奈が子ライオンにメロメロ状態ならば、ベルは紅奈にメロメロ状態。
まるでぬいぐるみを抱き締めているようにも見えて本当に愛くるしい紅奈に、ベルは王子の威厳を守るべく叫ぶことをぐっと堪えた。
だが、やっぱり。
紅奈の方が可愛いぃいいいっ!!!
永久保存しよう。とベルはしっかり手にしていたカメラで録る。
だが暗闇だから暗視モードになっていて、紅奈のこの笑顔が映せていない。
「この子、飼っていいかな」
「いいじゃん?」
そうだ、ケイタイがあったとベルは取り出してカメラモードを使う。
適当に頷けば紅奈はまた嬉しそうに笑ったため、ベルはカシャリ撮った。
「なに撮ってるの?」
紅奈がきょとんとする。
グルルッ。
唸り声が聞こえて、二人は紅奈の抱くライオンを見た。
子ライオンは紅奈にじゃれつき喉を鳴らしている。
このライオンの唸りにしてはやけに低くかった。
「!」
紅奈とベルは立ち上がり、互いに背中を向けて周りを警戒した。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]