空色少女 再始動編
300
「ヴァリアーの制服、着たい」
「はぁあ?…それが目当てでもあったのか」
「紅奈ちゃんのサイズに合うの、ないんじゃない?」
「オレのがあるじゃん」
紅奈が無邪気に輝かせた目で指差すのはスクアーロが着たヴァリアーの制服。
これを着る口実でもあるようだ。
スクアーロとルッスーリアは、ベッドから降りたベルに注目した。
「取りに行くぞ、オカマ」
「んま!一人で部屋に戻るのが怖いのね!ベルちゃん」
「ちげーし!」
ルッスーリアにベルはナイフを投げたがルッスーリアは避ける。舌打ちしてからベルは自分の部屋に向かった。
ルッスーリアも呼ばれたためついていく。
その間、スクアーロは紅奈の髪をドライヤーで乾かした。
「本当に大丈夫なんだろうな…?」
「しつこいなー、迷惑かけないようにするっつーの」
「オレ達は失敗は死だ。何が起こるかもわかんねーのに……」
「信用しろ、自分の身は自分で守って任務は邪魔しないから」
心配性のスクアーロに紅奈は頬杖をつく。
失敗は死、か。
「とある君主論でも"誰のどんな行動も結果によって判断される"って言ってるんだ。信じろ」
「とある君主論って……。お前の結果って、刺客に襲撃されたり誘拐されたりで怪我をしたことか?」
「いやいや結果的に無事に帰ったじゃん。とある君主論も"君主の行動に対しては、軽々しく疑問を挟んではならない。君主の行動は、結果で判断されるべきである"って言ってるぜ」
「君、そんな歳で君主論なんて読んだの?ちゃんと理解した?君主に対する臣民の側の恐怖感の必要や残忍な行為の有用さの主張からして君とは違う気が……!」
黙って聞いていたマーモンはつい口を挟んだが、紅奈の視線に気付いてハッとする。
残忍な行為がなくても、恐怖での支配はちゃんとある。一部。
つい小馬鹿にしたような発言をしてしまった。
「別に彼の君主論通りのボスになりたいわけじゃないよ。君主論は全部読んでない、立ち読みした程度」
マーモンが身構えたが紅奈は怒ることなく、さらりと返した。
今のはセーフだったのか。
「ふ、ふーん…」
(あの君主論通りのボスは……XANXUSが近いな…)
スクアーロがぼんやり思う。
するとくいくい、紅奈がマーモンに手招きした。
「な、なんだい?」
警戒するマーモン。
紅奈は笑って手招きをする。
恐る恐る近付くと、脇に紅奈の手が入り持ち上げられた。
そのまま紅奈はマーモンを膝の上に乗せる。
ぽすん。
「………」
「………」
これになんの意図が……!!!?
スクアーロとマーモンは困惑した。
マーモンなんてパニック寸前だ。
「な、なんだい!?」
「いや別に?やけに警戒するから」
振り払って逃げることなんて恐ろしい行為ができないマーモンはただ紅奈の膝の上に座る。
スクアーロが気にすることをやめてドライヤーをかけはじめれば、なでなでと紅奈はマーモンの頭を撫で始めた。
それからムニムニと頬を摘まむようにいじられる。
(……………………………!!!?)
物凄くいじられている。
物凄く嫌だが、紅奈にそんなこと言えない。
紅奈からこんな接触が今までなかったマーモンは絶賛困惑しているが、マーモンはサイズ的にそうなってしまっただけだ。
紅奈はスキンシップが多いのだ。
頭を撫でたり抱き付いたり、蹴ったり殴ったり。
撫でられているだけ幸いだ。
「お待たせー……ってなに紅奈の膝に座ってんだよ、チビ」
「んまぁ」
「これは彼女が…!」
やっとベルとルッスーリアが戻ってきた。
真っ先にベルは紅奈の膝の上にいるマーモンを蹴り落とそうとする。脱出するチャンスを掴んだマーモンは避けて紅奈の膝から逃げた。
既に紅奈はベルの持ってきた隊員服に興味が移っているため怒られずに済んだ。
早速着替えた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]