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空色少女 再始動編
504 再会と初対面


「んで? ボンゴレのトップどもから金を巻き上げた活動資金は、何に使う気だ?」


 XANXUSは、活動内容を問う。


「そんな…XANXUSお兄ちゃん。恥ずかしいことを言わせないで……えっち。」

「っ…!」



 恥ずかし気に頬を赤らめて見せる紅奈に、XANXUSはビクリと身体を強張らせた。


 はぐらかすための小悪魔演技。

 子どもらしかぬ、色気さえ滲み出す。


 目撃した家光もガナッシュも、固まった。


「……」


 XANXUSは、ぐいっと手を引いて、廊下の先へ向かう。

 ちょうど見えたスクアーロの元まで、真っ直ぐだ。


「おい、コラ。カス鮫が。お前は今まで紅奈の何を見てやがった?」

「あ”ぁん? いきなりなんだぁ?」

「なんでコイツの小悪魔演技に、磨きがかかってやがる?」

「……」


 XANXUSの問い詰めに、スクアーロは、明後日の方角に顔を背けた。


「フツーに女の子らしくなったからだけど? 自由に、伸び伸びと、成長しただけ」

「いらん成長だ」

「えー? 必要な成長じゃない? 女の子として」

「てめーの場合は、他人をからかうだけの小悪魔演技だろーが。無防備さは? 治ったのか?」

「……。」

「このドカス!!」

「いってぇーな! 眠ってたヤローが、あれこれ文句を言うな!!」



 ガツン! とXANXUSが、スクアーロの脛を蹴り上げる。

 強烈な痛みに、脛を押さえてプルプルと震えたスクアーロは、それでも言い返す。


「…なんの話をしている?」


 家光の声に、XANXUSもスクアーロも、ハッとした。

 愛娘が、10歳も年上のXANXUS達の前で、服を脱いでは着替えたりする無防備さがあったことを、知られるわけにはいかない。


「うしし♪ ボース。おひさー」


 その話を逸らすためにも、ベルが口を開く。


「…ベルか」

「あり? …なんか怒ってる?」

「……盗み聞きとは、いい度胸だな」

「え? あっ。あれはコウが派手に飛び起きるから、オレも起きちゃって……わざとじゃなーい。許してっ」


 コキ、と手の骨を鳴らすXANXUSに身構えて、ベルはサッとスクアーロの背に隠れた。

 三年前以上に、紅奈がXANXUSだけに打ち明けたつもりの前世の話。その盗み聞きに関してのお怒り。


「ほら、これ。新顔」


 生贄のように、骸の肩を突き飛ばした。
「やめてくださいよ」と骸は、その肩をパッパッと振り払った。


「クフフ、初めまして、XANXUSさん。六道骸です。三年前、紅奈の命令で、僕達のためにも、奔走していただけたようですね。お礼を申し上げます」

「……」


 微笑んで、骸はXANXUSに挨拶をした。

 これが、紅奈が求めた人材。そして、今回XANXUSの解放に、大きな働きをした新しい部下。

 XANXUSは、オッドアイを睨み下ろした。


「気に入らねー」

「!」


 足が振り上げられたため、骸は格闘能力である修羅道を発動する。ギリギリだったため、左手でガードしてから身を引いた。


「まったく。話に聞いていた以上です。ベスターに並ぶ凶暴さですね。まぁ、感謝の言葉は、期待していませんが」


 痺れが残る左手を、プラプラと振って、骸は肩を竦める。

 家光は耐え切れずに、声を上げた。


紅奈!? こんな部下達でいいのか!? 険悪すぎるぞ!?

「いつもこんな感じだよ、変わんない」

だから、うちの娘が暴力的に!

「家光さん。紅奈は、怒らせさえしなければ、とてもいい子です」

「あたしはいい子じゃないよ? 骸」

「余計な一言ですよ、紅奈」


 家光を宥めようとしたのに、台無しである。


「見繕った物件は?」

「こちらです」

「あら、いっぱいね。さっさと選んで、あの子達を迎えに行きたいけど……即入居可?」


 物件資料の束を、どっさりと渡された。


「今ポーカーで巻き上げたんっしょ? 上乗せすればいーじゃん。いくら取れた?」

「750万円だけ」

「だけってなんですか……足りないのですか? それは」

「ボンゴレの現ボスと守護者とポーカーしたんだよ? 1000万円は欲しかったけど、超直感相手に勝負はしないでしょ。今日はツイてない」


 750万円を勝ち取ったのは、十分ツイていると思うのは、骸だけだろうか。


「紅奈……迎えに行くという、その部下候補は……また、みんな男なのか?」

「ん? 女の子が一人いる。兄妹。お菓子作りにハマってて、先月一緒に作った」

「ほっ…」


 家光の問いに、紅奈はさらりと答えては、資料をパラパラとめくる。
 お菓子作り。なんとも女の子らしい部下だ。ちょっと安心である。


「なんて名前の子なんだ?」

「あたしの部下について詮索しないで、お父さん。娘にまた嫌われちゃうよ」

「うっ…」


 詮索してもらいたくない人物もいるのだ。紅奈は人差し指を立てて見せて、釘をさしておく。

「挨拶は済んだし、XANXUSは部屋に戻っていいよ?」

「は? 生意気言ってんじゃねーよ。見せろ、それ。何する気だ?」

「やーん、えっちー」

「やめろっつーんだよ、それ」


 XANXUSが紅奈の手元にある資料を奪おうとするため、ササッとかわす。


「活動拠点決めたら、預けてる子を迎えに行って、そこに住まわせる。それからXANXUSはあたしと帰国ね。そのあとにでも話す。待て。」

「…犬扱いすんじゃねー」


 待て、とは、犬扱いだ。カチンとくるXANXUS。


「おい待て。なんでXANXUSが紅奈と帰国すんだ…? う”お”ぉい……まさかじゃねーよなぁ?


 右手を翳すスクアーロは、ひくりと口元を引きつらせた。


「そのまさかだよ。積もる話もあるし」


 紅奈は、平然と答える。

 骸達に続いて、新しい居候が、XANXUSとなるのだ。


「紅奈? 僕達の部屋を使わせませんよね?」


 スクアーロが怒号を響かせるのを、焦った骸は腹部を押し退けて阻止。


「え? ……使わせる気だった」

「僕達の部屋だって言ったじゃないですか…」

「ええー、ごめーん。そうなると……他の部屋は、物置き化だもんなー…」

「取り消すか!?」


 自分の部屋を使われたくない。その気持ちを配慮して、紅奈は考えた。
 我が家にXANXUSを滞在させることの取り消しになると、家光は目の色を変える。


「あ? いない奴の部屋使って、何が悪い?」

「僕が気に入らないのでしょう? 部屋を乗っ取られそうで、心配です。僕達の部屋なので、やめてください。紅奈

「おい。何、情に訴えてやがる」


 しゅんとした顔の骸に、またもやXANXUSが蹴りを入れようとしたが、それを紅奈が肘で叩き落した。

 脛に当たったXANXUSは、痛みを堪えて口をギュッと閉じて、立ち尽くす。


「んー…敷布団でいいなら、あたしと綱吉の部屋でもいい?」

「「いいわけあるかっ!!」」


 家光とスクアーロが、同時に声を上げた。


「ベッドにしろ、ベッドに」

「なんで部屋の主が、居候にベッドを明け渡さないといけないの?」

「名目は休養だぞ」

「ただの名目でしょうが。添い寝は無理よ?」

「すんな!!」
「するな!!」



 スクアーロも家光も叫ぶのだが、紅奈はまるで聞こえてない態度だ。


「んー……じゃあ、これを機に二段ベッドに新調しようかな。滞在中、あたしと綱吉は上に寝るから、XANXUSは下ね」

「だから紅奈!?」

「元々、今のベッドだとそろそろ狭いかなって思ってたの。寂しいけど、別々に寝ることにするよ。XANXUSが帰ったら。二段ベッドは宿泊代代わりにも、XANXUSが買ってよね」

「だから、紅奈と綱吉の部屋にはっ…!」


 家光のことなんて、全く気にしない紅奈は、スクアーロに資料を持たせた。


「じゃあ、また明日ー。おやすみなさーい」


 ひらりっと手を一振りして、スクアーロ達を連れて部屋へと入っていく。




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