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空色少女 再始動編
502 北イタリアの黒髪美少女



「そういえば、ポーカーと女の子繋がりで、面白い話がありますよ」


 着々とチップが動いていく中、ガナッシュは思い出したように話題を出した。

 紅奈が前世の話に関する質問を、曖昧に回答するため、もう諦めたらしい。


「同盟ファミリーの友人から聞いたんです。今年の始めに、10歳前後の迷子達を一時保護していたら、その中の一人の女の子とポーカーをやることになって、それで大いに負かされたらしいですよ。ボンゴレの新年パーティーに参加出来なかった下っ端くん達の愉快な話です」
「おや? もしや、紅奈ちゃんだったりするのかい?」
「いえいえ。短い黒髪の女の子だったらしいですよ。紅奈ちゃんは、くりんくりんで綺麗なブラウンの髪じゃないですか」


 まさかと、ティモッテオに半分冗談で問われ、笑い退けてガナッシュは手を振って否定した。

 軽くお酒を飲んでいた家光が、それを聞いて固まる。


 …黒髪……?


 現場に現れたヴァリアーの制服に身を包んだ娘は、黒のショートヘアーだった。


 いや、そんな……まさか、な…。


 家光は、ポーカーフェイスを貫いた。


 同時刻。XANXUSの脳裏にも、PC画面に映った、ぐれた死神のようにヴァリアーの黒いコートに身を包んだ黒髪の紅奈が浮かんだ。


 …まさか、な……。


 XANXUSは無言で、膝上の紅奈の頭部を眺めた。


「被害額は?」

「被害額って……」

「ははっ。だいたい3000ユーロだそうですよ」

「本当か…?」

「ちゃんと帰したんだな? その子は。ガナッシュ」

「もちろんですよ。捜してたお兄さんの元まで送ってあげたそうで……泣く泣く、現金で3000ユーロをしっかりと持たせてね。
 面白いことに、そのファミリーだけではないそうです」


 そう守護者同士で話しつつも、コールと言っては同額のチップを出す。


「その同盟ファミリーだけではない? ……どういうことだ?」

「付近のマフィアの元にも、迷子だって言って現れて、ショートの黒髪の女の子がポーカーしては勝ち取ったお金を持って帰っていったらしいですよ。ベロンベロンに酔い潰れたマフィアから、勝ったお金だけを持って、消えたとか。とある一つのファミリーは、ポーカー中に襲撃されたらしく、黒髪の女の子を血眼で捜していたらしいです。北イタリアのマフィア達には、もう警告が広がっているらしいですよ。迷子の黒髪の女の子が来ても、ポーカーしちゃだめだって」

「それは、北イタリアの新しい都市伝説?」

「とっても可愛い子だったらしいので、きっとこんな都市伝説になるだろうなー。北イタリアのマフィアには、ポーカーしに訪れる黒髪の美少女がいるってね。ちゃんと、もてなさないと暴れられるってさ」


 ケラケラと、ガナッシュが笑う。
 紅奈は、平然と微笑んで相槌を打つ。


 家光は必死でポーカーフェイスを保つ。


 うちの娘が、その頃、北イタリア巡りの旅行をしていたはずだ……。


 頭を抱えたい。

 絶対に、紅奈だ。

 全然知らないマフィアの元に行って、ポーカーでお金を巻き上げた。なんてデンジャラスな北イタリア巡りをしているのだろうか。

 スクアーロ達は、一体何を考えてやがる。あとで問い詰める、絶対。


「おい、クソ退屈だ。もっとレイズしやがれ。ビビりどもが」

「参加してない直属の部下が、煽ってますよー? お嬢ちゃん」

「ええー? いい手がこないのにー……しょうがないなー、レイズ」


 XANXUSも、絶対に北イタリアの黒髪のポーカー少女は、紅奈だと確信した。
 家光の固くなった表情に気付かせまいと、引き付ける。

 紅奈は、先程から手元に来たカードを見ては、首を傾げてばかりいた。自信がないというのに、チップを重ねて、賭け金を上げる。


「大丈夫なのかい? お嬢さん」

「んー、心配してくれるなら、手加減してくれます?」

「すまないな。フラッシュだ」

「あちゃー、負けた」


 今回は、コヨーテが一番強いハンドを出した。
 チップがコヨーテの元に行くのを、しょんぼりしながら見る紅奈。


「何やってんだ。しっかりしろよ」

「ぶー」


 XANXUSに、紅奈は子どもらしく、唇を尖らせて見せるものだから、家光はその可愛さに震え上がった。


「くぁわいいっ!」

「るせぇー。てめーも、もっとチップを出せや」

「いい加減、くぁわいい娘を下ろせ!」

「次だ次」

「ぶふっ!」


 家光をスルーして、次を急かすXANXUSに、ガナッシュは噴き出す。





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