空色少女 再始動編
299
言い出したのは自分だ。
だからって何故こうなるんだ。
少しテンションが下がった紅奈は、移動中の真っ黒の車の窓を見つめた。
鏡のように紅奈を映し出したそれは、黒髪の少女を映す。
一時間前。
「は!?任務に参加だと!?できるわけないだろ!」
「参加じゃなくて連れてって」
「同じじゃねぇか!だめだ!」
「任務の邪魔はしない、ほらあたしスノボーでも実践で上手くなったし、実戦に立ちたいなぁって」
スクアーロは大反対。
イタリアを選んだのも宿泊先をヴァリアー本邸に選んだのも、全てはスクアーロ達に稽古をしてもらうため。
「お前が怪我したらオレが怒られるんだぞ!」
「大丈夫、自分の身は守る」
奈々に任されたのだ。
これでボスに怪我を負わせるなんて部下失格だ!
そしてもれなく家光に殺されかねない!
(スノボーと同じく)
「お前が思ってる戦闘はない!暗殺だ!屋敷に乗り込んで殺って去るだけだ!」
「屋敷の人間にバレれば戦闘あるんだね」
「邪魔する気満々じゃねぇかぁあう゛お゛ぉいっ!!!」
「まーまー、スクアーロ。紅奈ちゃんがついてきても成功率は下がらないわよ」
「下がる!下がるぞ確実にっ!!」
「失礼だなぁ、足引っ張んないのにね。ねー?」
「ねー?」
「ねー?じゃねぇぞう゛お゛ぉいっ!万が一何かあったらまずいだろうが!今度こそイタリアに来れないだけじゃない!オレ達も会いに行けなくなる!」
「どこまで信用ねぇんだよ…。だから自分の身を守るだけだって言ってんじゃん、他はしないから連れてってば」
「だめだっつーの!!」
「お願いー」
「だめだ!」
「スクー」
「だめ!!」
「連れてけつってんだよ」
上目遣いで頼み込んだがスクアーロは頑なに首を横に振るう。
ルッスーリアは軽く考えるため賛成したが、ルッスーリアはわかっていないんだ。
軽はずみな行動は良くない。
紅奈は幾度も気まぐれな行動を起こしたり、予想外なトラブルに巻き込まれる。
何が起きるかわかりゃしないんだ。
特にイタリア滞在中は。
紅奈がにこにこしていた故に、強く断っていたスクアーロだった。
しかし決めたことは譲らない紅奈は痺れを切らして、睨み付ける。
天使から悪魔へと豹変した紅奈の顔を目撃したスクアーロとルッスーリアは青ざめて震え上がった。
「わ…わかった……」
結局スクアーロが折れる。
「紅奈がいくならオレもいく」
ベルが言い出す。
「綱吉はどうすんだぁ!?」
ベルまで任務に出ると綱吉が一人置き去りになる。
綱吉はお風呂を上がって即ベッドに入り、疲れで爆睡中。
もちろん任務に紅奈は綱吉をつれていかないはずだ。
く る り っ。
紅奈は唯一屋敷に残るマーモンを振り返った。
「マーモン、綱吉を見ててもらえるかな?」
「も、もちろんさ!どうせ僕も寝るからね!タダで引き受けてあげるよ!!」
にこり、と微笑んで頼む紅奈にマーモンはビクリと震えた。
紅奈の後ろにいてマーモンは見なかったが、スクアーロとルッスーリアの反応でわかる。
天使のうちに紅奈の頼みを引き受けた方が身のためだ。
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