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空色少女 再始動編
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「…でも、そうだな。よく考えて、お父さん」

「なんだ? コウ」

「スクアーロとXANXUSだよ? 気性が荒い部下と話せば……同調するよ?」

「やっぱり悪影響じゃないか! 離れろ!!」

「余計なこと言うな…。家光。コイツは、こうやって人を弄ぶことが好きなんだ。…この三年で、悪化したようだな」


 悪化したとは、酷い言いようだ。


「成長したと言って」

「んな成長すんじゃねーよ。カスどもは、何してやがったんだ…?」

「貴方がいない分も、頑張ってたよ。特に、レヴィ。……ベスターの世話係をね

「おい。全然関係ない話だろーが。笑ってんじゃねー。ほら、これが証拠だ」


 笑いを堪えて肩を震わせている紅奈が、緩ませているであろう口元を見せつけるために、XANXUSは掴んだ紅奈の顔を家光に向けた。

「オレの娘をそんな扱いするな!」と、家光はそれどころじゃない。


「それで、おじいちゃん。パーティーって、具体的にどんなの? 立食パーティーみたいな感じ?」


 XANXUSに頬を掴まれたまま、紅奈
はティモッテオに尋ねて、話を戻した。


「そうだ。主に、今回の被害防止の功績を話題に交流をする、立食形式のパーティーとなるだろう」

「へーえ。XANXUSも、一緒に参加が出来るの?」

「それも議論中だよ、紅奈ちゃん。…XANXUSの処遇が、パーティーまでに決まるかどうか次第だ」

「そう。自己紹介なしでパーティー参加、かぁ……どうしようかな…。やっぱりXANXUS次第か。XANXUSは、どんな処罰の案が出てるの?」

「「………」」


 サラダをむしゃむしゃと食べていると、家光とティモッテオが顔を合わせる。


「何…?」


 紅奈が問うも、二人は気まずげな雰囲気で、口を閉じた。


「ここで言えないような、重たい処罰が出てるとか?」

「……それは、上に任せるんだ。紅奈」

「はっはーん? わりと残酷な罰? 軽いわけないもんね。どんな罰かしら?」


 首を傾げた紅奈は、XANXUSの顎を摘まんだ。

 その顔は、楽しげだった。悪戯っ子のように、にんまりと笑みを浮かべている。

 残酷な罰。そうわかっていると言うのに、何故そんな笑みなのか。


 家光は、顔色を悪くする。

 そんな家光に、紅奈は掴んだXANXUSの右手を翳した。

 ギクリ、と家光は強張る。


「手を切り落とすような罰が出てるの?」

「っ」


 残酷な罰を、娘の口から出た。

 動揺した家光だが、娘の方は、XANXUSと目を合わせると「ぷっ!」噴き出す。


「ぷははっ! XANXUSっ……! 手! 手だって!」

「……笑ってんじゃねー…」

「ひー! スクアーロに続いて……やだ、どうしてあたしの部下はマゾなのっ…! ぷはっ!」

「オレはマゾじゃねー」


 XANXUSの膝の上で、紅奈はぷるぷると肩を震わせてはお腹を抱えて笑う。

 イラッとした顔のXANXUSが、ぐりぐりと紅奈の頭を握っては揺さぶる。


「え? なんでスクアーロの名前が出るんだ…?」

「はーあー……無理、腹がよじれる…」

「なんで笑うんだ? コウ?」


 笑っている理由が、手を切り落としたスクアーロが真っ先に浮かんだからだ。


 忠誠の証のために、切り落としたスクアーロ。


 XANXUSはどこを切り落とすのか、と尋ねたこともあった。


 それが、今回はXANXUSの両手を切り落とすという方向に、持っていかれそうなのである。


 ツボに入ってしまうのも無理はない。不謹慎であろうとも。


「…切り落としても……憤怒の炎出せるかな?」

「だから、コウ……何故笑ったんだ……そんな罰なのに…」


 XANXUSの手を、また掴んでプラプラと揺さぶる紅奈は、不思議そうに首を傾げる。


「そうだね。食事中によくない話だった」

「う、うん、そうなんだが…」

「心配はしないよ。他がその罰を推しても、押し退けてくれるでしょ」


 紅奈はそうわかりきったように笑って見せて、食事を再開させた。

 ティモッテオが、息子の両手を奪うという罰を、決定させないだろう。そう信じている。


「XANXUSお兄ちゃん。もう自分で食べて。飽きた。」

「……チッ」

「「………。」」



 飽きたから、食べさせてやることをやめた紅奈。

 部下を想っているのか、いないのか……。

 疑問を抱いてしまう態度である。


 会話が途切れた。


 食事の音が響く。

 XANXUSが自分の手で、ステーキを切りながら、ティモッテオにチラッと目を向ける。


「おい、クソ親父……紅奈を、どう思う?」


 XANXUSから、ティモッテオに声をかけた。

 少し驚きつつも、ティモッテオはXANXUSから紅奈に目を向ける。


「…可愛いと思う」
「そうじゃねーよ、クソが。」


 家光も、ティモッテオも、紅奈を溺愛しやがって。そうじゃねーよ。真面目な話だ。


「日本から遥々イタリアにまで駆け付けたんだぞ。普段から、紅奈は直感が鋭かったが………紅奈、死ぬ気モード中に、超直感でイタリアに飛ぶべきだと思ったわけじゃねーよな?」

「夢から飛び起きたんだってば。……胸騒ぎが酷かったなー…」

「…これを、どう思う?」


 紅奈の”ボンゴレの血”に対しての能力に対する評価を、尋ねようとしている。


「ああ、それはあたしも聞きたいな。あの時、どう思ったの? それから、どう思っているの?」


 ティモッテオに目を向け、それから家光にも目を向けて、紅奈は首を傾げて見せた。


「……あの時は……本当の兄妹のように親しくしていたXANXUSや親しい友人のために、働いたのかと思った。…今なら、大事なファミリーのために働いたのだと思う」

「…で?」


 ティモッテオの言葉を、XANXUSが先を促す。


その超直感は……並外れている。恐らく……歴代で一番、鋭く、優れている超直感だろう

「…だそうだ。紅奈」

「褒められてる? ありがとう、おじいちゃん」


 そうは言うが、特別紅奈は喜んではいない。平坦な反応だ。

 XANXUSの言う、過剰なほどの自信家の面だろうか。自分の超直感は、優れているのだと、自覚済みなのかもしれない。


「……紅奈が、死ぬ気の炎を出したのは、9代目と同じ瞬間に見たのだが………そう、なのか?」


 家光は、自分の額を指差した。


「まだ見たことねーのか? 呆れたな…。今回の件で、現場に乗り込んだって聞いたのに……死ぬ気モードじゃなかったのか?」

「うん。なる必要はなかったからね。逃げ足の早い危険思想を持つ犯罪組織の上層部メンバーを、追い込み漁しただけだもん」


 そんな危険思想の犯罪組織を一網打尽にする任務に、部下を引き連れを突入して、大きな功績を立てたというのに、本気を出していなかった9歳の少女。
 末恐ろしい。






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