空色少女 再始動編
498 結論、暴君
もう少し、パーティーの様子について、ティモッテオに尋ねようとしたが、その前に。
「XANXUS! 仮にも、紅奈の部下なら、口の悪さに気をつけろ! 見本となるような部下なら、なおさらだ!」
「は? んな些細なことで騒ぐんじゃーよ、カスが」
「それだそれ!」
家光が、XANXUSに注意した。
「言葉遣いが紅奈に……って! ハッ!!」
あることを思い出して、家光は立ち上がる。
「コウ! アレは本当だったのか!?」
「アレって……どのアレ?」
「心当たりがありすぎるんだな!? とにかく、アレだアレ! 誕生日の日に言っていたじゃないか! XANXUSがかっこいいから真似したかったって!」
「ゴフッ!」
紅奈に問い詰めた家光の言葉に、水を飲もうとしたXANXUSが咽せた。
「紅奈ちゃんが、XANXUSの何の真似をしたんだい?」
気になって、ティモッテオが促す。
「前まで、自分のことをオレって言ってたそうです! ベルフェゴールがポロッと言い出したから……紅奈が、XANXUSがかっこいいからその真似だと、言い訳しまして……。事実なのか!? コウ!」
「…なんの濡れ衣だ。おい、紅奈」
家光の発言から、一人称オレだったことが、自分のせいだということになったらしいと理解した。XANXUSは、紅奈の頭を鷲掴みにして揺さぶる。
「おにいちゃんは、かっこいい、かっこいい。」
「棒読みしてんじゃねーよ。おい、家光。紅奈は初めて会った日には、もうオレと言ってたぞ。つまり……オレ様のせいじゃねーぞ。お前の育て方が悪いんだろーが」
「なんだと!?」
「むしろ、どう育てられたら、こんなガキになりやがるんだ? のこのこと10代目候補のライバルであるオレを捜し出して、話したいだとか遊びたいだとかぬかしやがったんだぞ。それから10代目になるって宣言しやがった。なんでカタギで育ったはずのガキが、銃撃戦の最中で相手の銃を奪って、ぶっ放すんだよ。生まれ変わりだろうが、病弱な姫がそんな戦闘能力があるわけねー。考えられる要因としたら、遺伝と育て方だろーが……てめーのな」
「んなっ!?」
ビシッと、XANXUSは指差して、家光を指差した。
なんか、紅奈の一人称オレの話から、ずれている。
XANXUSは、前世による悪い家庭環境による性格の歪みの表れだと、わかっているくせに。自分のように、だ。
前世についてはわざと口にしていないため、前世の前世のローナ姫が、紅奈の前世だと思われているとXANXUSも知っている。だから、言わない。
「そうだった! XANXUSと初めて会った時は、XANXUSの刺客の襲撃に巻き込まれて……! あの中で、戦ったのか!?」
「まぁー…スクアーロが来るまでは、なんとか粘った。爆撃が直撃しなかったとはいえ……流石に6歳の子どもの身体じゃあダメージが酷くって…。気力も限界だったんだ。スクが来たところで、寝といた」
「やっぱり死ぬ気モードで応戦していたのか!? 現場を見たが……酷かったぞ!」
「その酷さは、XANXUSお兄ちゃんが憤怒の炎で焼け野原にしたせいじゃないの? 綺麗な庭園だったのに…」
XANXUSの口の中に、ステーキ肉を突っ込み、紅奈はそう言った。
咀嚼して飲み込んだXANXUSは、家光に付け加えて教えておく。
「死ぬ気モードは、途中からだ。それまで、平然と戦ってやがった」
「おや……流石、ボンゴレの若獅子の娘…といったところだろうか」
家光の強さが遺伝したのではないか。ティモッテオが、小首を傾げた。
「ま、待て…! それじゃあ何か!? 銃の腕前は、お前仕込みじゃないのか!?」
「は? …オレ様は、銃の分解や組み立て、それから手入れしか教えてねーぞ……腕前は………どうしてだ?」
仲直りの現場で、家光は紅奈の射撃を目にしたのだ。
動きを封じるために足を撃ち抜き、武器を持たせないために手を撃ち抜いた。
そういえば、射撃なんて教えていない。XANXUSは、今更ながら気付く。
「? …銃なんて、引き金を引けば、フツーに狙いに当たるでしょ?」
「「………。」」
紅奈は、きょとんと家光を横目で見上げるだけで答えた。
特別な訓練などしていないのに、的確に撃てる。
「はは。紅奈ちゃんは、天才肌なんだね」
「まーね」
ティモッテオの褒め言葉を、紅奈は否定せずに鼻を高くした。
「…いいか、沢田家光」
「な、なんだ? XANXUS」
「これが、てめーの娘だ。過剰なほど自信家で、いっちょ前に強気で勝気で、そんでもって……暴君だ!」
ぽん、と紅奈の頭に手を置いて、XANXUSは言い放つ。
「人の娘を暴君言うな! 我が強いだけだ!! 格別なほどに我が強い!!」
「それが暴君だっつーんだよ」
「お前が言うなよ!?」
「オレ様を超える」
「そんなことを言うな! おい! なんつー暴言だ!」
「事実だ。」
そんなやり取りを聞いて、ガナッシュはまたもや笑いで瀕死になった。
何度死にかけるのだろうか。このダブル親子ディナー。面白すぎる。
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