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空色少女 再始動編
495 父とお留守番


 どうにか、紅奈を一人にさせないために、上手く説得しないといけないだろう。

 ふいっと、紅奈が後ろを振り返った。


「コー!!!」


 バンッと、部屋の扉が開かれる。
 飛び込んだのは、家光だ。


「奈々に、イタリアで仕事の手伝いをするって話したのか!?」

「え? 今頃? もうとっくに、お父さんと会って仲直りしたって、電話で話したんだけど」

「そうだ! 仲直りおめでとう、と言われた!! だが、仕事手伝うって、お前!! スクアーロの仕事を手伝うって、無茶苦茶なことをっ…!!」

「内容は話しちゃいけない仕事だって言えば、納得したけど? おじいちゃんのところで、将来有望だから、ぜひとも働いてほしいって部下達の意向でってスクに言わせたら、すごいって喜んでた」

「喜んではいたがっ…! オレの仕事も手伝うとかっ…!!」

「あながち、嘘ではない」

ぐっ!! 確かにそうだな!? うちの娘が、賢い!!


 複雑な心境が露骨に顔に出た家光を一瞥したあと、紅奈は前へ向く。しかし、もう一度、振り返った。


「ちょうどよかった。暇してるなら、一緒にいてよ」

えっ!? 一緒に!? コウと一緒に!? いる! いてやるぞ!?

「暇してるんだね。夕食のためにも、いるんでしょ。スクと骸も、ちょっと出掛けるから、ボディーガードがてら、ここにいてよ。スク達も、ボンゴレの若獅子がそばにいれば心配ないでしょ」

「いや、それはそれで、別の意味で心配だぞ?」


 大興奮により、家光は顔を真っ赤する。
 悪い予感しかしない、とスクアーロと骸も、新たな心配を抱いた。


「何が心配なんだ!? スクアーロ!」

「てめーの娘愛が爆発するのが心配なんだよ。いきなりハグして、仲直りを取り消されては、死ぬ気モードで大暴れする引き金を引かれたら、たまったもんじゃねーぞぉ」


 武器がないが、死ぬ気で暴れ出すことが出来るのだ。

 せっかく、XANXUSを解放させて取り戻したというのに、紅奈が大暴れしてしまい、台無しになりかねない。


「娘愛が爆発して何が悪い!?」

「う”お”ぉいっ! 悪いっつってんだ!!」

「娘と! 仲直り! したんだぞ!?」

「うっせぇーぞ!! 仲直りの会話は、オレ達も聞いてた!! 徐々に距離詰めろって釘さされてただろうがぁ!!」


急接近はマジ無理、とまで言われていたじゃないですか………次は、絶縁されますよ? 本当に」


 すでに、娘愛が全開でアウトしかけている家光を、スクアーロも骸も、改めて釘をさす。

 骸は同情いっぱいの眼差しで、家光を見上げた。


「ボンゴレ9代目はともかく、家光さんは別に……また絶交状態になっても、紅奈はあまり不便を感じないかと」

父親と絶交云々で、不便を感じないってなんだ!?!?!?



   パンッ!!!


 そこで響く、破裂音。

 銃声かと思い、身構えた。

 スクアーロが紅奈の無事を確認した際に、両手が合わさっていることに気付く。紅奈が手を叩いただけだ、と力を抜いた。


「そういうことで、早く用を済ませて。」

「……本当に大丈夫かぁ?」

「しつこい。」

「………わかったぞぉ。おい、骸」

「はい」


 紅奈がもう待つ気がないと察して、スクアーロも骸も肩を竦める。


「絶対ですよ? 絶対に、急接近はなしです」

「う”お”ぉいっ! 紅奈を怒らせんな! 絶対にな!」

「だから、なんで他人に娘との接し方を、とやかく言われないといけないんだ!?」


「お父さん、早く座って。後片付けの現状や、CEDEFの仕事について聞きたいんだけど」

「えっ! 
仕事の話のためだけなのか!!? 三年以上も全然喋らなかったお父さんと積もる話があるよな!? コウ!!」


 結局、マフィア関連の話をしたいだけのようだ。

 それなら、紅奈もわりと冷静に対応するだろう。

 大丈夫だと思うことにして、スクアーロと骸は、部屋をあとにした。



 紅奈の向かい側の椅子に腰を下ろした家光は、緊張した面差しになる。


「……紅奈…。オレから、話をしてもいいか?」

「何?」


 頬杖をついて、紅奈は家光を見つめ返した。


「…えっと……そうだな…。何から、話せばいいのやら……」


 話をしたいと言いたかったが、家光は頭をがしがしっと掻く。

 足を組んだ紅奈は、くいくいっと上の足を揺らしながら、待つ。


「………」

「……」


 それでも言葉が出ない家光に、紅奈はしびれを切らして、ため息を深くついた。


「生まれる前の記憶があろうとも、あたしは沢田紅奈。お父さん、沢田家光の娘。それは、変わらない」

「!」


 娘の秘密を次から次へと知った家光に、とりあえずかけてやる言葉はこれがいいだろう。

 実の娘は、何者か。その答え。


「コー……!」


 家光が、目を潤ませた。


「コウ!! ぐあっ!


 立ち上がった瞬間に、紅奈が間にあった短い脚のテーブルを蹴り押したため、家光の脛にヒット。


「急接近。禁止。」

「う、うぐっ……! む、娘が……暴力をっ…! 許さん、S・スクアーロ…!」

「なんでスクアーロの悪影響だと思ってるの?」

「だって! ローナ姫について少し調べたが、資金援助はのちにボンゴレのシマとなったそこを愛していたためだ! 別荘に残された庭園のように、美しく、穏やかで、優しい姫だったはずだ…!! 根が優しいのは、変わってないとは思うが! それがなんでっ!! 冷めた目をしては、暴力を振るう子に!?」

「うっさ。」

「ほらー!!」


 面倒だと、紅奈は息をつく。

 ローナ姫の生まれ変わり。

 それしか言っていないため、家光達は前世の前世のローナ姫が、紅奈の前世だと勝手に思っている。

 だから、ローナ姫の性格も引き継いでいる、と考えているのだ。





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