空色少女 再始動編
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「紅奈!!」
「んまぁ!?大丈夫!?」
慌ててスクアーロとルッスーリアが駆け降りるが遠い。
「いてててっ」
ベルが起き上がる。
ぶんぶんと頭を振って雪を払う。
トレードマークのティアラをかぶり直して、見当たらない紅奈を探した。
ゾッ。
ベルは悪寒を感じて、すぐさまその場から這い出た。
ボードをつけているにも関わらず、俊敏な動き。
ベルが先程いた場所に紅奈の拳が振り落とされた。
「ベル!……てめぇえ!!」
「…やべ」
紅奈の怒りがMAXだと気付いたベルは身の危険を感じて、滑り出す。
獲物を定めた捕食動物さながら、紅奈は直ぐ様ベルを追う。
「う゛お゛!?…ぉいっ!おっ…い……っ紅奈ぁあああ!?」
やっと追い付いたのに紅奈は行ってしまう。
しかも、ボードで。
今日初めてスノボーをやったのに、ボードでベルを追い掛けた。
必死に逃げるベルを物凄いスピードで追う。
真っ直ぐ一直線に滑っていくのだから、ノーブレーキ。つまりはスピードは増していくばかり。
そのスピードで紅奈が無傷で止まれるわけない。
よってこの末路は───────────紅奈が大怪我を負う!!!
「う゛お゛ぉいっ!!!マーモン!そのボードを寄越せぇ!」
「…やれやれ」
予め用意していたボードをマーモンに落としてもらいそれをつけてスクアーロは紅奈を追い掛けた。
奈々に任されたのだ。
これでボスに怪我を負わせるなんて部下失格だ!
そしてもれなく家光に殺されかねない!
最終的には至極無理難題のスピードで三人まとめて派手に転んで終わったのだった。
しかし幸いにも雪が積もったばかりのため、柔らかい雪がクッションになり軽症で済んだ。
「むち打ち……うぐっ…」
「てめえのせいだ…ベル…っ」
「紅奈……だ…大丈夫かぁ…?」
ベルは紅奈に捕まり、そのまま押し倒されるように転倒。猛スピードのままの転倒での強打は破壊力があった。
スクアーロはブレーキに失敗して転倒。こちらも強打。
ルッスーリア達が来るまで三人は動かなかったという。
「紅奈ちゃん、大丈夫?」
「コーちゃん…王子サマ…」
「うー…」
ダメージでぐったりする紅奈とベル。
ルッスーリアはミネラルウォーターの入ったペットボトルを紅奈に渡した。
「痛いんだけど…首と背中と腹…。特に紅奈の蹴りが決まった腹が」
「自業自得だろ」
「だって…」
腹を抱えつつもベルはスクアーロに目を向けた。
前髪で目を隠しているため誰もベルの視線には気付かない。
(アイツといちゃついてるからだろ…!!!)
嫉妬心からの行動だったのだ。
紅奈は構ってくれない上に、スクアーロは紅奈にべったり密着。
かっ拐いたくもなる。
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