空色少女 再始動編
480 盛装
後片付けの指示をし、十分だと判断したのち、紅奈達はその現場である施設を出た。
「……面会の許可が降りた。紅奈の提案通りだ。身体検査を隅々まで行って、武器は一切なしの状態。9代目の守護者も立ち合いの元、今回の功績の報酬交渉の場を設けてもらうこととなった」
「よし行こう。すぐ行こう。」
「いや待て待て。守護者が揃うまで、時間がかかる。明日だ、明日。面会場所である、ボンゴレの屋敷に連れて行く」
家光のストップがかかり、紅奈は口をと尖らせる。
しかし、どうせ、今すぐには無理なのだ。
焦りを吐き出すように、深く息を吐いた。
「ボンゴレ9代目ボスと、面会をするんだ。紅奈」
「……そうだけど?」
「つまり、盛装すべきだ」
「……?」
キリッと真剣な雰囲気で言い放つ家光を、紅奈はしかめた顔で怪訝に見上げる。
「ドレス! コウ! ドレス!!」
「家光さんの言う通りですね。盛装は、必要です。買いに行きましょう、紅奈」
「レッツゴー♪」
乗り気なベルと骸が、紅奈の手を引いた。
「お前らもだぞ。……本当に、同席するのか?」
念のために言っておくが、家光としては遠慮願いたいと、ジト目をスクアーロに向ける。
「その許可は、もうもらったんだろうが。ドレスを買うなら、さっさと買うぞ」
「はい。王子、いい店知ってるー♪」
「化粧などは、どうするのですか?」
「そこまでする?」
「する。」
「します。」
気合い入りすぎ。紅奈は、少々げんなり気味だ。
骸とベルに手を引かれた紅奈の背を、家光は見つめた。
「……紅奈。求める報酬の件だが」
「それは9代目とする話だってば」
「だが…」
「ここでは、話さない」
「コウ」
「止せ、家光!」
振り返りもしない紅奈に、家光が食い下がろうとしたが、スクアーロが間に入って制止させる。
「なんだ? スクアーロ」
「それ以上、しつこくするのはやめろ! 紅奈がブチギレるぞ!! 仲直りが台無しになってもいいのか!?」
「何故お前はそこまで紅奈のブチギレを気にする!?」
「ブチギレさせたくないからに、決まってんだろうがぁ!」
「オレの娘を暴れん坊みたいに言いやがって!」
「その通りだが!?」
「なんだと!?」
スクアーロとひとしきり言い合いをしたあと、家光は紅奈達を盛装させるために、それに相応しい店へと連れて行った。
「…紅奈……」
「何よ」
子ども用ドレスも扱うブランド店の中。
ベルと骸が、ウロウロと紅奈のドレス選びをしている間、すでにヴァリアーの制服を脱いだ紅奈は休憩椅子に腰かけていた。
そこに、家光が声をかける。
「……スクアーロには、部下として一目惚れされた、と言ったな?」
ちらり、と家光は、紅奈の横に立つスクアーロに目をやる。
スクアーロは、しれっとした顔で反応を示さない。
「そうだけど?」
「そのあとに、XANXUS。そしてベルフェゴール」
「うん」
「……コウを、10代目と支持した。そのはずだよな?」
「…ええ」
紅奈は頬杖をついたまま、横目で家光を見上げた。
「矛盾……している。当時、スクアーロを問い詰めた時……紅奈がクーデターを知っているのか、と驚いていた。紅奈は……XANXUSの企てたクーデターには、関与していない。そうだろう? だが……XANXUS達は、お前を支持していた部下だったはず。この矛盾は、なんだ?」
スクアーロが、顔を歪め、家光を睨みつける。そのせいで、ピリピリした空気になった。
紅奈は横で見上げていた目を、前に戻してから、少し間を開けて、口を開こうとしたが。
「キングー! これ、どう?」
「いえ、絶対これですよね?」
「は? オレの方がキングの好み知ってるし?」
「おやおや。それはどうでしょうか? 紅奈に決めてもらいましょう」
空気を読まない少年二人が、選び抜いたドレスを持ってきた。
「コウには、絶対赤がいいし」
「いえ、水色です」
「…青でもいいんじゃねぇか? ほら、そこの」
(ん? 赤に、水色に、青……? まるで、守護者の色だ……偶然か…?)
家光が疑問に湧いたように、この三人は自分の守護者の色を勧めているのである。
「ん〜………勝負しに行くんだ。強気な赤にしよう。赤は勝利の色だし、盛装ついでにゲン担ぎ」
「うししっ! じゃあ、コレ〜!」
「それは微妙」
「ガーン」
紅奈もドレス選びのために立ち上がって、店内を歩き出した。
話の途中なのに。
「おい、スクアーロ」
スクアーロまで行ってしまうが、家光は呼び止めた。
「……本当に、紅奈は、あのクーデターに関与してねぇよ」
顔だけ振り返ったスクアーロは、そう答える。
「あれは……オレ達の過ちだ」
それだけを告げて、紅奈のドレス選びに参加した。
一体。どういうことなのか。
難しい顔をした家光は、腕を組んで、ドレス選びをする紅奈の後ろ姿を見つめる。
しかし、ドレスの試着した紅奈を見れば、その顔は緩みに緩んだ。
着飾った娘。最高に可愛い!
翌日。
面会場となったボンゴレの屋敷。
着飾った紅奈達は、玄関から入るなり、念入りな身体検査が行われた。
「う”お”ぉいっ! コラ! その義手をさっさと返せ!! なんも入ってねぇだろーがぁ!!」
剣は車に置いてきたスクアーロは、義手を外させられては、仕掛けがないかをチェックされる。
何もないにもかかわらず、返却しようとしなかったため、相手の胸ぐらを掴んだ。
紅奈からのプレゼントである。
紅奈の赤いドレスがゲン担ぎなら、スクアーロのそれも同じだ。
絶対につけて、同席する。
「ベルフェゴール……身体検査を受けるとわかっていたのに、どうしてそんなに装備してきたのですか?」
「うっせーし。習慣だし」
次から次へと、ベルからはナイフが出てきた。
止まらないナイフの出現に、骸はほとほと呆れてしまう。
「コウ? それは?」
「ん? ただの暇つぶし。爆弾じゃないから、ちゃっちゃと調べて」
家光が問うと、紅奈は平然と答えては、それを危険物ではないことを調べさせた。
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