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空色少女 再始動編
476 作戦変更







 同時刻。ヴァリアー屋敷内。


「どこへ行くんだ!? スクアーロ!」

「あん? てめーには、関係ねーだろうがぁ、オッタビオ」


 引き留めるオッタビオを、スクアーロはギロリと睨み付けた。


「ルッスーリアとレヴィまで連れて…! マーモンとベルフェゴールも、一週間以上不在だ! 何をしているんだ!? 何をしようとしている!?」

「二度も言わせんじゃねーよ」


 オッタビオには関係ない。


「関係大有りだ! 他にも数人の部下を動かしているよな!? 勝手になんの真似だ!! ヴァリアーの責任者として許可はっ」


 ヒュッと剣が頬を掠めたため、オッタビオは言葉の続きが出なかった。

 スクアーロは、凶悪に笑う。


「止められるモンなら、止めてみやがれ。出来るならなぁ?」

「っ!」

「んもう! 早く行かないと、怒られちゃうわよ?」

「…急ぐべきだ!」


 ルッスーリアとレヴィが、急かす。

 それで、ピンときたオッタビオ。


「もしかして、紅奈様のために、動くのか?」


 歩き去ろうとしたスクアーロは、止まった。


「ならば、私もお手伝い、ぐはっ!!


 スクアーロの蹴りが、腹部に入れられて、オッタビオは廊下に倒れるはめとなる。


「余計なこと、くっちゃべるんじゃねーぞぉ? 舌切り落として、目の前でベスターに食わせてやる」


 口止め。脅しではなく、本気だ。

 凶悪に笑いつつも、目は怒りでギラギラさせたスクアーロに、たじろぐ。


「だめよ。ベスターちゃん、舌肥えてるから、食べないわよん」

「レヴィ、てめー…どんな高級肉を食べさせてやがるんだ?」

「ベスター様をボスとしてお世話せねばいけないのだから、高級食材を出すべきだろ!?」

「だから食費がクソ嵩んでたのか!? ふざけんな!!
 ベスターが食べなくても、三枚におろしてやるからなぁ!? 紅奈に、近付くことは許さねーぞぉ!! 他言無用だぁ!!


 釘を刺しては、スクアーロはルッスーリアとレヴィを連れて、ヴァリアーの屋敷を後にした。









 集合地点では、犬と千種が先にいた。


 紅奈達のあとに、スクアーロ達が到着。スクアーロが厳選したヴァリアーの隊員は、別の場所で待機。


 作戦の見直しがてらの確認。


 骸にも渡した通信機器で、連絡を取り合う手筈。チョーカーとイヤホンのデザインの通信機器。常に、声を発するとチョーカーが拾って、各自に伝わり、イヤホンから聞こえる仕組み。

 準備は万端。


「は!? 家光の野郎と仲直り、だと!?」

「ああ。……嫌々ながら、死ぬ気で頑張る…

「物凄く嫌々な顔してるわよん、紅奈ちゃん」


 ちょっとした変更点を報告。

 驚愕を隠せないスクアーロ。

 紅奈の隠せていない嫌々な表情を見てしまったルッスーリア。


「なんでまた、仲直りなんて……唐突だな、う”おい」

「うん、まー、相談してもらって……よくよく考えたら、仲直りって餌は交渉に役立つと思って」


 交渉のために、仲直りを餌にする……???

 悪女だな、おい。



 仲直りしたい父親に対して、仲直りを利用するのだ。悪い娘である。


「ぬぅう! それで上手く行くんだろうな!?」

「貧乏揺すり、いい加減やめろよ、ブス」

「うっせぇぞレヴィ!! 文句あるなら降りろや!!」

「いや、お前が一番うっせぇから、スク。お前マジで通信機をオンにしたら、声量に気を付けろよ」

「オフにはしないでよね! お嬢! 一度切ると、繋げるまで、時間がかかるんだから! その間、何があっても知らないんだからね!」

「何があるって言うのさ? ん?」

「ムギュー!」

「やだ、紅奈ちゃん。マモちゃんのほっぺ、そんなに伸ばしたら戻らなくなるわよ」

「いやいや、大丈夫じゃね? もっと伸ばしちまえー、ししっ」

お前達!! 緊張感を持たないのか!!?

「「うっさい、ブス。」」


 紅奈と暗殺部隊の和気あいあいなやり取りを、距離を置いて眺める犬と千種。正直言って、怖くて、輪に入れやしない。


 そんなこんなで、決行目前の時間が迫っていた。


 予定通り、配置についたのだが。






   ドォン。





 爆音が響く。


 念には念を、とCEDEFが誘導した捕縛場は、森に囲まれた建物だ。網のフェンスで取り囲まれている何かの施設で、少々入り組んでいるが、一同はすでに内部構造は把握済み。



 そんな建物から、爆音。



 CEDEFが動き出すより早くに、紅奈達が動いては先に捕縛する計画。捕縛は、背後から忍び寄り、喉元にかじり付いて仕留めるように、動くはずだった。CEDEFも、そして紅奈達もだ。



 なんじゃこりゃ。



「骸ー。聞こえるー?」


 紅奈は、チョーカーの通信機で繋がっているはずの骸に呼びかけた。
 どんな状況なのやら。


〔聞こえています、コウ〕

「現状は?」

〔簡潔に言えば、攻撃をされています。こちらの動きに気付いて、迎え撃った、というわけでしょう。本当に、危ない思想を持つ人間は、どうしてこうも頭がキレるのでしょうか〕

「はは。それわりとブーメランだって気付いてない?」

……。


 骸も同類なのだ、と紅奈に言われてしまい、黙ってしまう。


 CEDEFの動きはバレてしまい、追われ続けるよりも反撃に出た、というところだろう。


「よし、野郎ども。聞いてるな? 作戦変更。CEDEFの人間に加勢しろ。容姿もコードネームも、把握してるよな? 絶対にCEDEFの人間は、傷付けるな。命を救えば、こっちの株が上がる。ヴァリアーを堂々と名乗って、何人たりとも敵を逃すな。捕縛のための追い込みは、作戦通りのままだ。いいな? 返事は、一つのみ」

〔〔〔〔〔Si(はい)〕〕〕〕〕


 返事は、了解のみ。

 退路はしっかり塞ぐ手筈は整っているし、戦闘しつつの追い込みだ。
 逆に、こちらも血の気の多い連中が大暴れ出来る。好都合。



「誰もくたばるなよ。これは、始まりだ!」



 短い黒髪のウィッグ。夏用の薄手で短いヴァリアーの制服に身を包んだ紅奈は、笑みを作る口で舌舐めずりをする。


 膝のプロテクターが銀色の光を放つが、瞳の橙色は、さらに強い光を放つ。



 猛獣が、食らい付く時が来た。









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