[通常モード] [URL送信]

空色少女 再始動編
296




   ズテン!


「いっ!大丈夫か!?」


そんな簡単にいくほど、人生は甘くなかった。

紅奈は顔面から倒れる。

またもや受け止め損ねたスクアーロは青ざめた。


「…くそ」


雪の中から顔を上げた紅奈の表情からは明らかに苛立ちしか見えない。

今度こそ雪の中に沈められる、そう思ったが紅奈は立ち上がった。


「バランス感覚が悪いのかな…」

「まだ感覚がわからねぇだけじゃねぇか?」


顔面から倒れるのだけは避けようとスクアーロは紅奈の前に立って、雪を払い除けてやる。


「焦ってると出来るもんも出来ねぇぞ」

「別に焦ってないもん」

「基本ができりゃあなんとかなる」


基本からやる。
それは簡単そうで難しい。

綱吉も綱吉で苦戦しているが元々綱吉は運動神経がよろしくない。
運動神経がいい方の紅奈はなんとしても上達したい。


   ずしゃあっ!!


「うししっ!」

「うお!?」

「!!」



リフトに乗って滑り降りてきたベルが通過する。
その際にわざとスクアーロの目の前でブレーキをかけ、雪をかけた。


まだ柔らかい雪は簡単に舞い上がり、スクアーロと紅奈に降りかかった。


そのままベルは滑って下に行ってしまう。


「………にゃろう…」



雪を被ったスクアーロと紅奈は、殺気を出して遠くのベルを睨む。


ぶふっ!!!


それに吹き出すのはまたしてもレヴィ。

紅奈はベルが固めて放置した雪玉を投げて男の急症にクリーンヒットさせた。

レヴィは沈んだ。


「よし、じゃあ次は後ろ向きに。ブレーキは爪先だ」

「ん。」


悶えるレヴィを完全無視して紅奈とスクアーロは続けた。

綱吉というとへばって休憩中。
ルッスーリアがビデオカメラ片手に綱吉と雪遊びを始めた。


「次倒れたら雪投げるからな」

「うおい…初心者で倒れずに済む方が可笑しいぞぉ」


レヴィにはなりたくないスクアーロは、紅奈が転ばないようにしっかりと抱き締めるような形で支える。


ルッスーリアはニヤニヤしてビデオカメラを向けた。


ひしっ、と胸に回されるスクアーロの腕を抱き締めて紅奈は足に集中力を注ぐ。


「スクアーロは何分で上手くなった?」

「数分でできるわけねぇだろ。オレはスキーも出来てたからな…二日でまぁ大体滑れるようになったぞ」

「じゃあ意地でも今日滑る」


キリッと目付きを鋭くする紅奈。

意地っ張りすぎる。


   ずしゃあっ。


またベルが戻ってきた。
今度はベルが近付く前に紅奈とスクアーロが気付く。


ベルは雪を舞わせながら、真っ直ぐ滑ってきた。


真っ直ぐ。

真っ直ぐにくる。


一直線だ。


「え?」


   ブゥンッ!


「な!?う゛お゛ぉいっ!」

「しししっ!紅奈もらい!」


そのまま突進。
かと思いきや、直前で曲がった。

その際に紅奈に抱き付き、スクアーロの腕からかっ拐う。


そのまま走行。


「ベル!」


紅奈は怒って怒鳴る。
ベルが支えながらボードを二つ並べて走行しているが、紅奈はまだまだ初心者。

そのまま滑って降りれるわけもなく、バランスを崩す。


「わっ」

「っ!」


   ばふんっ!


派手にコースアウトして積み重なった雪に突っ込んだ。






[*前へ][次へ#]
[戻る]

[小説ナビ|小説大賞]