空色少女 再始動編
467
「これは、あたし自身が生み出したようなもので、大きな功績を立てる絶好な機会だが……。骸。一ヶ所に集めての捕縛する計画だっけ? それ、詳細は決まってるの?」
絶好の機会を、逃すわけにはいかない。
どう動けばいいのか。
CEDEFの計画を聞き次第、こちらも動きを決めて、計画を立てなくてはいけない。
確実に、その獲物に食らいつくため。
「現時点では、活動拠点を絞り込んだ場所のどこかで、全ての上層部メンバーが集まるように仕向けようと動く下準備をしています。CEDEFの一番重要な案件ということで、顔バレのしていない精鋭の者が、すでに4人、潜入中です。情報を得ながら同行を見張っていて、直接誘導が出来るポジションまで行ける者や、誘導出来るポジションの人間に近付く者、と動きはそれぞれですね」
骸は答えながらも、考える。
この案件は、確実に紅奈に差し出すべきものだ。
なら、自分が、出来ることは……?
「僕も、本格的に参加する動きは、幻覚を行使しての潜入です。僕も出来る限りの誘導が出来るように、役目を担う予定ですが………能力を買われていても、新人である事実がありますので、下手を踏んでもカバーが出来るような浅い位置での活動となりますね。…ですが、事前に一網打尽の捕縛する現場の情報は、提供が出来ます。念入りの準備をするのです、決行日も一週間や数日前には決めてからになるでしょう」
「潜入活動しながら、こっちに情報を渡せる?」
「はい、可能ですね。むしろ、潜入活動中だからこそ、情報を渡すための連絡が出来ると言えます。CEDEFの目がありませんので、かえって安全に連絡が出来るのです」
紅奈が見極めるように、じっと見てくるため、骸も真っ直ぐに見つめ返す。
自信はあるのだと、示すためにも。
「捕縛の際の手筈や人数、そしてメンバーは?」
「突入して、捕縛するのは、親方様である家光さんを含めた8人の予定だと聞かされました。今のところ、家光さん以外は、知りません」
「少なくね?」
「密かに、接近しては、確実に捕縛することが目的なのです。相手は三度も逃げのびた相手ですので、これくらい慎重になるのは当然かと」
ベルに対して、そう骸は冷静に答えた。
「…ふむ。他に情報は?」
「これで以上となります。今後も、有益な情報を手に入れ次第、連絡しましょうか? ……この案件を、手に入れるのならば」
紅奈が決定を下すのか、否か。
「紅奈。CEDEFを出し抜いて、そいつらを捕縛する。それを功績にするのかぁ?」
骸に続いて、スクアーロも、紅奈の決断の言葉を待つ。
「これでヴァリアーを動かせば、名誉挽回になる。そして、それを率いたのは、10代目候補の紅奈だってことで、ド派手に表舞台に上がるって方向だったけど……この案件を掻っ攫って手柄にすることで、決定?」
未だ表沙汰になっていない10代目候補の紅奈の存在を、知らしめる好機。
クーデターの前科からヴァリアーの名誉挽回。
それから――。
「ヴァリアーの名誉挽回………そして、10代目候補として名乗りを上げて、表舞台に立つ………どの候補者よりも優れていると示して、カギを手に入れて、XANXUSの救出をする…」
紅奈は腕を組んで、足元を見つめて、考え込む。
他の候補者よりも、優れているという証明をし、10代目ボスの証となるボンゴレリングを得る。
そのボンゴレリングが、XANXUSの解放をするためのカギ。
「何を迷っている? コウ。十分の大物じゃねーのかぁ? 他の候補者より、秀でている最有力候補として、スッポトライトを浴びるには、おあつらえ向き。バタフライエフェクトとやらで出来上がって育ったモンだぁ。自分で、掻っ攫っておきたいだろう?」
決断が下されない。
何を考えて、何を迷っているのか。
スクアーロは、確認したのだが、紅奈は口を閉じたままだ。
「………」
やがって、目まで閉じてしまった。
沈思黙考だ。
スクアーロと骸は、顔を合わせた。ベルにも目を向けるが、肩を竦めて見せるだけ。
紅奈が何を考えて、何を迷っているのか。
三人には、わからない。
わかるのは、その考えの邪魔をしないように、自分達も黙って待つべきだということ。
じっくりと、考えに耽る沈黙が流れる。
「……ふぅー。だめだ。イマイチ、決められない」
くしゃくしゃと紅奈は、前髪を片手で掻き荒らした。
「あ”あ? 何がだぁ?」
一体、何に悩んでいるのか。
スクアーロは問うのだが、また紅奈は答えなかった。
「手合わせして」
「はあ!?」
「…いーけど」
「?」
紅奈に急かされて、決定を後回しにされたことに疑問でならないまま、三人はいつもの稽古場まで向かう。
奈々への出掛ける理由は、買い出しだ。
「誰を相手にするんだ?」
「三人。」
「は?」
先ずは、誰を指名するのか。稽古用の剣を取り付けながら、スクアーロが尋ねれば、紅奈は簡潔に答えた。
一度に、スクアーロとベルと骸を、相手にする。
変だと、三人は怪訝な顔になってしまった。
紅奈は、膝に銀のプロテクターを取り付けては、シュシュでポニーテールに髪を束ねて準備を整え終える。
ボスの希望だ。
スクアーロは従おうと、二人に頷いて見せた。
右隣のベルも、そして、さらに右隣の骸も、武器を構える。
フッ。
紅奈の額に、オレンジ色の炎が灯る。
死ぬ気モードになるのは、想定済みだ。
自分から言い出しては、この三人を相手にするのだから、本気で挑む。死ぬ気モードになれると、紅奈は確信していただろう。
ダッ。
しかし、予想外な動きに出た。
紅奈が、スクアーロに向かったのだ。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]