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空色少女 再始動編
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「今日は見に来ただけ!」

「撮りに来たの間違いじゃない?」


きゃぴっと決めるルッスーリアの手には、ビデオカメラ。
スチャ、とマーモンもカメラを取り出す。


「紅奈ちゃん、スノボーやったことあるの?」

「ないよ」

「スキーは?」

「ないよ」

「あら、完全初心者じゃない。初心者はスキーからやった方がいいわよ?」

「スノボーがいい」

「今日一日じゃあ上手くならねぇぞ…?」

「なんとかなるさ」


心配するルッスーリアを尻目に紅奈はスクアーロの手を借りて立ち上がった。


「ほら、あたし天才だし」


どやっ。

相変わらずの自信家だった。


「ルッス。暇なら綱吉を付きっきりで見てくれない?」

「もちろん、いいわよ!レヴィ、ビデオよろしく!」

「そうだそうだ、レヴィだったね。名前」

「忘れたのか!?」


紅奈はスクアーロに見てもらって綱吉はルッスーリアに見てもらえば、効率がいい。

素で紅奈は離れた場所に立つ男・レヴィの名を忘れていた。


「紅奈はともかく、綱吉は一生無理じゃね?」


ずっとパタパタとボードで跳ねるベルが笑う。


「ベルも経験者なんて、意外だね」

「オレは万能だし、王子だもん」


うししっ、とベルは誇らしく紅奈に笑ってみせた。

ベルもスノボー経験者。
跳ねてる様子からして、相当の腕前のようだ。


「仕事で必要なスキルだからな」


スクアーロが言う。


暗殺部隊のヴァリアー。
色んな舞台で仕事をするのだ。
雪山で逃走する際に滑れないのなら任務は失敗する。

よって暗殺者たるもの、板で雪の上に滑ることも出来なければならない。


「なるほどなぁ………っ!」

「!、わっ悪いっ」


スクアーロが手を放した瞬間、ズルリとボードが滑り紅奈は雪の上に倒れた。

それを笑うのはレヴィ。
ギロリ、紅奈は睨んだ。


「コーちゃんっ!大丈夫!?」

「…大丈夫」


ルッスーリアに引っ付く綱吉に短く答えて、紅奈は一人の力で立ち上がる。


「踵がブレーキだぞ」


また倒れないようにいつでも受け止めれるよう構えながら、スクアーロは教えた。
次倒れたら理不尽に雪の中に沈められかねない。


「んじゃあ、まず右に移動してみろ」

「ん」


ズルズル。
ゆっくりと斜め右下に滑る。

ぎこちない紅奈をレヴィとマーモンは撮影した。


(ボス!この餓鬼の無様を見てください!!)

(ふん、年相応だね)


この撮影はいつか戻るXANXUSのためだ。

見られないXANXUSのために紅奈の姿をバッチリ撮ってやる。そう決めたのだ。


一名はXANXUSに売ると決めていたりする。


マフィアになることを反対していても、紅奈の成長はみたいはずだ。

紅奈の成長ビデオとして残そう。


「なーなー。暇なんだけどー」

う゛お゛ぉいっ!うるせーぞ!滑ってくりゃあいいだろ!


雪玉を固めながら暇を弄ぶベルに苛立ち、スクアーロは怒鳴る。

目の前の紅奈はあまりのボリュームに苛立ち睨み上げた。


紅奈にも構ってもらえないベルは唇を尖らせながらも、スノボーで一人滑っていく。


軽々と滑っていくベルの姿を見て、腹立たしく思う紅奈。

くそう、絶対一日で滑ってやる。







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