空色少女 再始動編
447 ある情報
3月20日。もうすぐ、三学期が終わる。
宿題を終えて、紅奈はギリシャ語の勉強をしていれば、通信機が光った。
すぐに手に取っては、イヤホンを嵌めて、通話に出る。
「どした?」
〔骸からメールが届いたぞぉ〕
「メールが?」
あれ以来、夢で会えていない骸。家光経緯で、電話のやり取りをしていただけ。厳しい教育を受けているとは、暗に伝えられているが、それ以外の合図はなかった。
そんな骸から、念のために教えていたスクアーロが持つ携帯電話に、メールの連絡。
〔おう。内容は、冬休みにお前が接触したランチャーファミリーが、ごたごたしているって情報をたまたま聞いたってことで、念のための連絡だとよぉ〕
「ごたごた?」
冬休みの北イタリア旅行で、最強の用心棒と名を馳せたランチアと接触した。そのファミリーの名前を聞いて、紅奈は首を傾げる。
〔お前が気に留めてたからってことで、知らせたんだろ。ごたごたとしか、書いてねーなぁ……〕
「もめ事ってことでしょ? スクに連絡するほどなんだから……結構、大事なのかもね」
スクアーロへの連絡だって、安全とはいかない。
そこまでして連絡となると、ごたごたなんて、可愛い響きで治まらないだろう。
〔唾つけておいたランチャーファミリーの最強の用心棒。どうするんだ? ほっとくか? なんか手を打っておくか?〕
「んー……そうねぇー……。情報が少ない。ちょっぱやで、情報掻き集めてくれない?」
〔それって、大事なら、介入するって意味かぁ? まぁ、お前がそう判断するなら従うが………言っておくが、絶対に一人行動はさせねぇからな?〕
「判断には従うくせに、過保護でついてくる気満々なの? まぁ、とりあえず、調べておいてよ」
北イタリアの最強の用心棒・ランチア。原作だと、骸によって操られては、ファミリーを皆殺しにする罪人となるキャラだった。
骸は復讐から救い、紅奈のファミリーになっては、家光の組織に潜入中。
その骸から、危機を知らせてもらうとは。
なんとも、奇妙な展開だと思えるのは、紅奈だけだろう。
「…春休みに間に合うといいけど」
〔あ”!? やっぱり、イタリア行き、一回目を使うのかぁ!? そんなに、ソイツを必要とするのかぁ? 強さは評価出来ると思うがぁ……介入するためだけに、その一回を使うほどなのかよ〕
「それは状況次第だって。一回ぐらいいいじゃん」
〔はぁあ? まぁ、お前がいいなら、いいがぁ……すぐに北イタリア、ランチャーファミリーの情報を得たら、連絡するぜぇ〕
よろしく、と紅奈は告げては、切った。
そして、考える。
……今回はどんな口実で、イタリアに行こうか。
自由に、好きなタイミングで行くという権利を得たが、表向きの理由が必要だ。
下手をすれば、奈々と綱吉もついてくることになる。それでは行動がしづらい。
やはり、二人を置くように、仕向けなくてはいけないだろう。
「………」
不思議でしょうがない。
綱吉のことだ。
去年の冬休み。綱吉と離れるリスクを覚悟して、功績を立てようと決めた時だ。
それに勘付いたかのように、綱吉は泣きじゃくっては、いかないでほしい、と何度も言った。
「置いていかないで……っ」
「っいかないで」
「…ずっといてっ…コーちゃん」
引き留める言葉で、抱き締められたあの時。
それなのに、骸達を捜しに行った時も、この前の冬休みの際も、送り出された。
「……ねぇ、ツナくん」
「なあに? コウちゃん」
宿題に取り組んでいた綱吉を、呼んでみる。
じっと見つめれば、きょっとんと見つめ返された。
「この前の冬休みみたいに……春休みも、イタリア旅行に行くって言ったら、どうする?」
「え? ……それって、スクアーロお兄ちゃんたちと、コウちゃんが一人で行くってこと?」
不安げな顔になる。
「うん。またお父さんを待ってあげるとしたら、お母さんが一人になっちゃうでしょ? ツナくんも、残る? それとも……あたしには行かないでほしい?」
試して悪いが、紅奈は答えを求めた。
今回はどんな選択をして、答えるのだろうか。
「えーと、えーと……犬くんたちと会うの?」
「うーん……多分、会えないかな」
「そっかぁ………んー……じゃあ、オレはお母さんと待つよ!」
紅奈は、目を丸くする。
また。
離れてもいいと、選択して答える。
「コウちゃんは、ちゃんと帰ってくるもんね?」
なんて、にこっと笑って見せる綱吉。
「帰ってくるよね?」
「ちゃんと……帰ってきてね? コウちゃん」
帰りを待つ。
帰ってくるから、送り出す。
ただ。それだけのことなのだろう。
「……うん。帰ってくるよ。ツナくん」
紅奈は微笑んで、ギュッと綱吉を抱き締めた。
「ありがとう、ツナくん」
むぎゅっと抱き締め返す綱吉。
[次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]