空色少女 再始動編 441 「その用事の邪魔だ! チョコだって迷惑だ! 渡しに行くんじゃねぇぞ!? さっさと自分のシマに帰りやがれ!!」 ドアノブに、手をかける。 「絶対に紅奈をブチギレさせんなよ!!?」 明日を台無しにされてたまるか! 「叩っ斬るからな!!」 警告をしては、さっさと部屋の中に入ろうとした。 「ブチギレた紅奈は、強いのか?」 ぴたり。動きを止める羽目になる。 「…は? なんの話だ?」 ひょこっと、リボーンはディーノの頭の上に乗り移った。 「お、おい! リボーン! それは!!」 ディーノが顔色を変えるが、リボーンの野郎は続ける。 「オレ達は出逢った日に、男を気絶させては車を奪ったところを見たことあるぞ。主治医も中学生五人を相手に、喧嘩して勝っていたとか言ってたしな」 紅奈め……そんな出逢い方をしたのかよ。 しかも、シャマルの野郎まで……。 動揺すんな。 これは。 見抜かれてはいけない。 「紅奈に喧嘩の仕方を……お前が教えたのか?」 慎重に。 言葉を選べ。 ミスをすんな。 紅奈のためにも、失敗は許されない。 アイツの最強のボンゴレボスになる道を、阻ませるわけにはいかないのだ。 「身の守り方を、教えて何が悪いんだ? 三年前からアイツは、オレ達に引っ付いてきた。暗殺部隊の屋敷にまでな。最低限の身の守り方を教えただけ。それを……まぁ、絡んでくる中坊相手をボコボコにしたことあるとは聞いたが……身を守っただけだろ」 「なんてもん教えてんだよ!? カタギの子に!」 「うっせーな! 自己防衛だろうが! それが出来ねーよりマシだろうが!!」 カタギの少女に、自己防衛のためにも喧嘩を教えた。例え、家光にチクられても、どうともなる範囲だろう。 現に、紅奈は身を守れたのだから。 「そうか。お前は紅奈と、どうやって出逢ったんだ?」 「はぁ? なんで、それを尋ねてくるんだ?」 リボーンは、何故探りを入れてくるんだ。 なんの情報を、聞き出したいのか。 「これは好奇心だぞ。オレとディーノは、紅奈が超絶機嫌が悪い時に出逢っちまったんだ。おかげで、ディーノは三回も蹴りを食らっている」 小さな手で三本の指を立てたリボーン。 紅奈……同盟ファミリーのボスに、なんで三回も蹴りを入れてんだよ…。 どうりで、喧嘩の強さを疑われるわけだ。 腹をさする跳ね馬に、憐れみの目を向けてしまった。 「てめぇらは、なんでそんなに嫌われてんのに、関わろうとしてんだよ……」 「まぁまぁ。とりあえず、教えてくれよ。紅奈に懐かれた出逢い方」 いや、はぐらかすな。 関わる理由は、一体なんだ。 何を企んでやがる……? 「……じゃあ、答えてやるから、そっちも答えやがれ。紅奈に付きまとう理由をな」 「いいぞ」 ……まぁ。出逢い方ぐらい、いいだろう。 「三年以上前だ。銃声がしたから、乗り込もうとしたら大爆発。そこにいたんだ。紅奈は」 嘘は、迂闊にはつかねぇ。だが、詳細は伏せる。いや、省くだけだ。 居候の際、骸に紅奈は家光に対して、そうするべきだと助言していたことを、覚えている。 それが、役に立つとはなぁ……。 駆け付ければ、爆発。そこから、飛び出てきた。額には、橙色の炎を灯していたのだ。 満身創痍。それでも、銃を構えて追手に立ち向かおうとした。 気付けば、そいつの前に立っていたのだ。そして、剣を振るった。 「倒れた紅奈を、オレは助けた。聞けば家光のせいで、人質のために誘拐されたらしいが………二日寝込んだアイツが起きて、初めて目を合わせて会話した。元気そうだったから、頭を撫でた。それだけだぞぉ」 その際に、紅奈が死ぬ気の炎を灯していたと、オレが言い張った件を、家光から聞けば、まずいな……。 聞かねーといいが……。 わざわざ、家光にオレと紅奈の出逢いを、確認のように訊く理由はないはずだ。 「目覚めたらお前がいたって……普通なら気絶しないか?」 「てめぇら……おろすぞゴラぁ」 リボーンと一緒に跳ね馬まで、なんとも言えない表情で見てきた。 確かに子どもには好かれない顔だとは、自覚している。やめろや、その目。 「……あと、二回だ」 「二回?」 ついでに、紅奈に懐かれた理由を、話すべきだろう。納得しそうなやつ。 「紅奈は、そのあともイタリアで、二回もトラブルに遭ってんだよ。XANXUSの野郎の襲撃と暗殺に巻き込まれてなぁ」 「な、なんだって!?」 「その際も、オレは紅奈を助けた。危険な場から、助け出されたんだ。心を許しもするだろうがぁ」 紅奈が懐いて、心を許した理由。 「そんな風にトラブルに巻き込まれ続けた紅奈に、身の守り方を教えないわけにはいかないだろ。家光に何度止められようとも引っ付いてきた紅奈に、自分の身を守ることを教えてやったんだ」 これで、十分だろうか。 質問は、紅奈との出逢い方だ。 「以上だ。次、てめーらの番だ。そんな紅奈に関わって、またもやトラブルに巻き込ませるってんなら……」 「いやいやっ! 違う!! そんなつもりじゃないぞ!」 ブンブンと、跳ね馬は両手を振り回して、慌てて否定した。 「紅奈の好感度を上げて、笑顔を見たいだけだぞ」 「……はぁあ?」 リボーンが、そう答えたものだから、目を見開く。 「…それが……紅奈に付きまとう理由か?」 「ああ。紅奈の涙を見ちまってな」 「!」 「女の涙を見たんだ。笑わせたいって思うのは、男として当たり前じゃねーか?」 紅奈を笑わせたい。それだけで、紅奈に会いに来た。 「……いつ…紅奈が泣いた?」 なんでコイツらが……紅奈の涙を見てんだよ。いつだ。 「オレ達が出逢った日だぞ。車を奪って、紅奈はある場所に向かった。知ってるはずだ。骸って少年を見付け出したのは、お前らしいじゃねぇか。その骸と紅奈の待ち合わせ場所だ。そこで紅奈は、待ち続けては……泣いたんだぞ」 骸と待ち合わせした場所。聞いてはいた。 会えないから、捜し出すために動いたのだ。 「……オレは……いつ、見たのかって訊いてんだ」 場所じゃない。いつだ。 てめーらが出逢った日は、一体、いつなんだ。 「ボンゴレ本部で騒ぎがあった直後」 「!」 「そう言えば……お前にわかるはずだ」 「………」 そんな気がした。 強い紅奈が泣いたんだ。涙を落とす理由なんて。限られてる。 オレ達のクーデターのあと。 機嫌が超絶悪いわけだ。 泣きもするわけだ。 オレ達の過ちに、傷心してたんだ。 顔を背ける。伸ばした髪で顔を隠しても、足りねーな。 落ち着け。 感情を表すな。 見抜かれんじゃねー。 ボンゴレ9代目と親しいコイツなら、クーデターのことも知っているだろう。XANXUSのことだって……。 逆に、好都合かもしれない。XANXUSの目的は、ボンゴレボスの座を奪うことだった。 動機のもう一つが、紅奈のためだとは、誰にも知られていない。 よって、紅奈が10代目ボス候補だと知っていても、支持者であり、ともに活動しているとは、見抜かれないはず。 [*前へ][次へ#] [戻る] |