空色少女 再始動編
292 本音。
くしゃくしゃ。
お風呂上がりの紅奈の髪をベッドの上でスクアーロが拭いてやれば、紅奈はようやく家光の説教について訊いてきた。
「………家光には誤解といたからな」
「ディーノはといてないんだ?」
「それはお前がやれ!」
「やだ、めんどい。いいじゃん、ほっとけ」
「そうやって嘘の恋人を言い触らすとお前を好く奴から告白が来なくなるぞ!」
って、家光が言っていた。
紅奈は鼻で笑い退ける。
「既に恋人がいるからって好きだって打ち明けない程度の気持ちなんて知らね」
「……」
目の前の小学生がものすごい。
そう思うスクアーロだった。
「それが…もしも、お前の本当の好きな奴でもか?」
「本当に好きな奴がいるならあたしからコクるけど」
「跳ね馬が言い触らしてオレが恋人だと思い込んでるのに?」
「そこははっきり嘘だと言えばいいじゃん」
相変わらずだ。
以前ロミオとジュリエットの話でもそうだったが、本当に紅奈は恋愛でも一直線。
ファミリーにしたい者も恋人にしたい者も、すぐに手に入れようとする。
流石はあの我が儘王子が、キングと呼ぶだけある。
「好きなら好きと、伝えるべきだ。本心を伝えないまま、わかりえないままになりたくないならな……」
そう呟いた紅奈は、まるで後悔しているように感じた。
紅奈の表情を確認しようと顔を覗こうとしたが、先に紅奈が振り返って笑いかける。
「お前らの本音、伝わってるよ」
くしゃくしゃ。
紅奈はスクアーロの頭を撫でて、大人びた微笑を向ける。
「ありがと」
「っ!」
頭を撫でてその微笑に突然の礼の言葉。
どうしようもなく調子が狂う。
「もったいねぇだろ!んなことで礼を言うな!」
真っ赤になった顔を見られないようにスクアーロはタオルで紅奈の視界を遮った。
「あたしの本心を伝えとこーと思って」
「…っ…。…伝わってる。十分にな…」
ボソリとスクアーロは紅奈に言う。
紅奈が笑ったのが伝わった。
(──────────………幸せだ…)
スクアーロは心底そう思った。
紅奈に仲間と認められただけで、こんなにも幸せを感じる。
やっぱり紅奈じゃないと、だめだと痛感した。
紅奈こそが、我がボス。
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