空色少女 再始動編
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「おい、シャマル。紅奈は、何者なんだ?」
リボーンは、尋ねる。
「は? 何者って……」
シャマルも、ディーノも、ポカンとしてしまう。
だが、リボーンは、真剣な雰囲気だ。
「大人達が海に墜落した飛行機の中で大パニックを起こしているところを、一喝した少女を普通だと思ってんのか?」
「え? いや、オレも只者じゃねーとは思ったが……あの沢田家光の娘だって知って、腑に落ちた」
「最初に会った日、紅奈はボンゴレの屋敷にいたんだ。9代目とその息子と親しかったらしい。
だが、ブチギレて9代目を罵ってたんだぞ」
「は!? ボンゴレの9代目にか!? なんでまた!?」
部屋の外で聞いてしまったディーノも思い出しては、ちょっと顔をひきつらせた。
あれは、とんでもない罵倒だったのだ。
「そのあと、男を気絶させては茂みに隠し、車を奪って運転してたぞ」
「はあ!?」
そうなのである。ディーノは思い出して、強張った顔のまま、本当なのだと頷いて見せた。
「男を気絶させたのはともかく、運転って……フロントガラスなんてまともに見えなかっただろうに」
「そこなのか!? そこだけなのか!? 気になんのは!」
「いや、落ち着けよ、跳ね馬のボーズ。紅奈ちゃんは、中学生の男ども相手に喧嘩して勝ってたんだよ」
「小学生が中学生相手に、喧嘩!?」
シャマルとしては、紅奈が男一人くらい気絶させられることには、驚く必要はないと思えるのである。
紅奈が喧嘩してのした中学生達のそばに、座り込んでいた姿を目撃済み。
「相手は五人だったな。弟をいじめた子どもの兄が仕返しに来たんじゃないか、とか言ってた。以前から、喧嘩っ早いらしいな。父親の話によれば、三回もマフィア絡みの事件に巻き込まれては、怪我してたらしいし……なんだったかな、あの暗殺部隊の白銀髪のボーズ達の名前………」
「スーくんことS・スクアーロか?」
そう、リボーンが言った名前の暗殺者である。
その頃、イタリアで、スクアーロは盛大にくしゃみをした。
「そうそう、そいつらだ。大方、そいつらに喧嘩の仕方でも習ったんじゃないのか? 紅奈ちゃんは……守られるより、守りたいタイプの強い子だからな」
「あ、悪影響じゃないか! スクアーロ達!」
「いやいや、紅奈ちゃんにとっては…」
いい薬になるのだ。紅奈が立ち直ったきっかけ。
医者の守秘義務。この辺も、言わないでおく。
「悪影響じゃないとは言い切れねーが、いい関係だと思うぜ? 当人は守りたいタイプとはいえ、紅奈ちゃんには尽くしたいって思える魅力があるからなぁー。居候のこと、知ってんだろ?」
「ああ、骸って名前の奴だろ」
「そいつらを紅奈ちゃんの頼みで、三週間もイタリアに行って、捜し回ったらしいぞ? そのスクアーロって奴」
「えっ!? スクアーロが見付け出したのか!?」
紅奈が再三待っていた相手である骸を見付け出して会わせたのは、スクアーロだ。
「金髪のボーズだって、紅奈ちゃんにゾッコンだって様子だな。せっせと看病してたし。骸もそうだが……どうも犬タイプの男ども達が集まるみたいだ」
「「犬タイプ?」」
「番犬、だな。お姫様を守る番犬どもだ」
ケラケラとシャマルは、スクアーロ達をそう例えた。
「いや、待て。紅奈ちゃんは、お姫様タイプじゃねーな……女王様だな」
決め顔で言い放つシャマル。
少女に対して、女王様とは……。
だが、否定が出来ない。
確かに紅奈は、お姫様と呼べるような可憐さはない。
凛々しさのある女王様が、しっくり来てしまうのだ。
「ちなみに、同情から親切に教えてやろう。
紅奈ちゃんには、押してだめなら引いてみろ作戦は通用しない! 何故ならば、ついて回って尻尾を振るようなタイプを好むと言っていた! よって、猫のように気まぐれに離れるなら、忘れるそうだ! 覚えてとけ、跳ね馬のボーズ!」
「なんの情報だよそれ!?」
ビシッと指を差して、憐れな少年に助言を与えておく親切なシャマル。
まぁ、犬のように付きまとっても、ディーノに望みは薄そうだが…。
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