空色少女 再始動編
429 もらってもいい?
「お嬢さん。さっき、外国語で、何を言ったんだい?」
「ん?」
場所を聞いて、ランチアが連れて行こうとする前に、ランチャーボスは問う。
きょとんと、コーは目を瞬く。
「×××××××?」
微笑んで言ったコーの言葉の意味。
コーは、ああ、と思い出したようで、声を漏らす。
「もらってもいい? って言ったの。じゃあ、良い年越しを」
はにかんで、そう答えたコーは、ランチアを引っ張って玄関から出て行ってしまった。
「やめてくださいよ……その最強の用心棒ってのは」
「事実じゃねーか。そんな用心棒に、引っ付くとはぁ……お目が高いな! お嬢さん!」
ランチャーボスは、口元を引きつらせる。
「お前……とんでもない娘に目をつけられたんじゃないか? ランチア…」
最強の用心棒を。
もらってもいい?
なんて問うた少女。
一体、何者なのやら……。
同時刻。
ランチアも、一体、何者なのか。
そう疑問に思いつつも、手を繋ぐコーを連れて歩く。
「コー。名前は……コー、なんだよな?」
「うん。愛称だよ。でも本名は、まだ教えなーい」
「……」
無邪気に笑う少女。正体不明。
ランチアの視線に気付いて、コーは見上げながら首を傾げた。
「なぁに? あたしを悪い子だと思ってる?」
「え、いや……」
「まぁ、あたしは、いい子ではないけどね」
「どっちなんだ!?」
悪い子なのか、いい子なのか。
はっきりしてほしい。
「ランチアお兄ちゃんのファミリーに、害さないよ。それがわかればいいでしょ?」
「……あ、ああ…」
そう。ランチアは、この正体不明の少女を連れて行ってしまったのだ。
自分の大事なファミリーのアジトに。
万が一にも、ファミリーを害するような存在ならば……。
……どうして、そう考えたことがわかったのだろうか。
欲しかった答えが出てきたことに、ランチアは不思議に思う。
ギクリ、とした。
コーの瞳は。
見透かすような。
橙色が煌めくブラウンの瞳だ。
「忘れないでね、貸し一つだよ? 正式に挨拶が出来るようになったら、教えるね。また会いましょう、ランチアお兄ちゃん」
するりっと、繋いだ手が離れた。
コーが駆け出す。
追いかけようとしたが、コーは少年に飛びつき、腕を絡めた。
友だちの元に、帰ったようだ。
バイバイと手を振るコーに、ランチアも手を振り返す。
コーと腕組みした少年は、じっとオッドアイで見据えてきたが、コーと人混みの中に消えてしまった。
繋いでいた手を見てみる。
ランチアは、妙に寂しい気持ちを残された。
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