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空色少女 再始動編
421 予定




「んで!? 今回のイタリア滞在の目的は!?」

「半分観光だよ、マジで。でも半分は実戦積みが、目的」

「実戦だぁ? それなら、何かヴァリアーの任務を見繕って…」

「冬休みの間で出来る任務って……多くても二つや三つでしょ?」

「だからと言って、北イタリアをフラついて、どうやって実戦をするんだ?」

アポなし北イタリアのマフィア巡り!

「やめんかぁああっ!!」


 きゃはっと右目に横からピースを添えるギャルぶる幼いボスに、スクアーロは声を轟かせた。


「いきなりすぎるだろうが!? どんだけリスキーなことをしようとしてんだ!?」

「やだな、スク。何も北イタリアの全マフィアに喧嘩売りに行くわけじゃないよ?」

当たり前だろうがぁああっ!!


 紅奈に肩を竦められる覚えはない。


 こんな幼いボスを、他のマフィアの元に乗り込ませるものか!

 スクアーロ、過保護モード!


「つまりはあわよくば、実戦を求めるんだろ!? 違うか!?」


 半分は北イタリアのマフィア巡りという名の観光、もう半分は実戦経験を重ねること。

 あわよくば、狙いである。

 ニッコリ笑顔な紅奈。肯定。


「ヴァリアーだ! ヴァリアーで稽古にしとけ!! だいたいっ! お前は北イタリアのマフィアを知ってんのか!? 無謀に挑もうとするな!!」

「ああ。すみません。北イタリアのマフィア、僕が知っているファミリーを全て教えてしまいました」

骸てめぇええっ!!


 挙手する骸が、余計な情報を与えたらしい。


「あ”!? なんでてめぇが北イタリアのマフィアについて知ってんだぁ?」

「僕達が逃れた例のファミリーの残党を探すためにも、その、色々と調べましたから……ね」


 少し、骸が口ごもる。


「なんで歯切れ悪いんだ?」

「いえ、別に……ただ………調べていた目的が後ろめたくて」

「後ろめたい?」


 スクアーロは、片方の眉を上げた。


「ええ……子どもの僕でも内部破壊が出来そうなマフィアを、ついでに目星を付けていたので

今日一番てめーが物騒だな!!?

「それほどでも」

「褒めてねーよ!!」

マフィアへの復讐を目論んでいたので、仕方ないじゃないですか

「紅奈!? こんな目論見をした奴を、本当にファミリーにしてよかったのか!?!?」


 悪びれずに笑顔で言い退ける骸に、スクアーロは紅奈に再確認せずにいられない。


 紅奈とは、別物の危険を持つ子どもである。


 子どもでマフィアを内部破壊って、どんな発想だ。


 なんで暗殺者の自分より、カタギのふりをした子ども二人が、物騒なのか。理解に苦しむ。

 誰か。保護者役を。代わってくれ。


「ああ、そうそう。骸達のことなんだけどさー…………」


 華麗にスルーした紅奈が、そう口にしたが、黙ってしまった。


「ん? なんだぁ?」


 頬杖をついて、悩む素振り。

 自分達の話のようだから、犬と千種も立ち上がり、紅奈に注目した。


「家光の門外顧問チームCEDEFに、送り込もうかと思う」


 目を少しだけ細めてから、紅奈はそう告げる。

 稽古相手を務めながら、居候生活をしていた骸達に、言い換えれば仕事を与えるということ。


「選択肢の一つとは聞いたが……本気か!? 下手踏まれたら、何もかもバレるぞぉ!?」

「なんらと!? 下手なんて踏まねーぴょん!!」

「んな確証はどこにあるんだ!? あ”ん!?」

「うぐっ…!」


 ムキになる犬だが、ぶっちゃけると犬自身に、上手く潜入する自信などないのである。


「ですが、スクアーロ。我がボスが、門外顧問チームCEDEFの情報をご所望ですよ? そうですよね、紅奈?」


 自信のある骸は、微笑を浮かべて、紅奈に尋ねた。


「家光の管轄ってだけで、嫌悪感で躊躇していたが…………どーにも、今抱えているであろう仕事が気になってしょうがない」

「あ? 例の怪我を負った仕事が、まだ続いているって考えてんのか?」

「んー、直感だけだから、なんとも言えないが……同じピリピリ感をまとって出勤していくんだ。半年前から、続いていると私は睨んでる。当たりなら、相当にデカい案件だろう」


 本当に紅奈の直感だけが頼りではあるが、そうとしか思えないのだ。


「紅奈の直感なら、高い確率で当たると、僕は思いますが………家族旅行も泣く泣く諦めて、冬休みは家を空けることになったのですよね? 冬休み明けには、解決しているのではないでしょうか?」


 宣言した家族旅行を撤回してまで、力を入れて取り掛かるであろうその案件は、片付くこともあり得る。


「そうだなぁ。CEDEFは、主に諜報活動をするとは聞いたが………怪我を負ったっつーことは、敵に探りがバレて攻撃を受けた。そんでもって、敵に存在を気付かれて警戒されて、半年近くまで手こずって、ようやく畳み掛けられるまで追い詰めた。オレは、そう予想がつくが……他にあるか?」

「あたしも、その予想を立てた」

「僕も同じく」


 諜報活動。敵を探り、情報を得る。

 主に諜報活動をしているだけであって、高い戦闘能力も備えているのだ。

 ボンゴレの若獅子と呼ばれた家光が、怪我を負わされた相手。野放しにしていい相手ではないと、安易に想像は出来る。


「その案件。こっちで掻っ攫えば、派手な表舞台デビューになれると思うんだが……」


 紅奈が虎視眈々と狙う絶好の好機の可能性。


「例え、ずるずるとまだ長引くような、想像以上にデカい案件だとする。だがぁ……運良く潜り込んだ骸達に、それを教えてやると思うか? どんな組織構造かは知らねーが、ヴァリアーなら、子どもの新人を飛び入り参加させねぇぞぉ。ベルは8歳で入隊しやがった天才だが、お目付け役は今でもマーモンがほぼついて任務している状況だぁ」

「おや。ならば、話はとても簡単ではないですか。飛び入り参加をさせるほど、才能を見せ付けて、有望だと思わせればいいのです」


 ベルと同じく、子どもであろうとも、使える有望な人材と示せれば、参加させてもらえるはずだ。


「先ずは自分達を売り込み、組織に入れてもらいます。子どもである僕達は、教育を受けるでしょうね。短時間でそれを済ませる、または現場に出してもらえるように誘導しましょうか。上手くやれれば、可能です。最低でも、その案件の重要さなどならば、調べられるかと」


 骸はちっともプレッシャーを感じていない様子で、そう語る。


「もちろん、万が一にも、下手を踏んだとしても……紅奈についての情報は口を割りません。なんなら、契約書にサインしましょうか? クフフフ」


 潜入がバレたとしても、紅奈が差し向けて、マフィア活動をしているなど、口にしたりはしない。冗談を装っては、骸はオッドアイで紅奈に真剣に告げた。


「まぁ、それが絶対条件だなぁ……。家光の野郎に中途半端にバレたら、今後は徹底的にオレ達を遠ざけかねねぇぞぉ」

「そう。中途半端は、だめだ。本当に今後に支障が出る」


 骸達が口を割らないという絶対条件で、行動させるべき。


「……プレッシャーすぎるんら…」


 死活問題だ。
 潜入に自信のない犬の顔色が悪くなる。


「犬には荷が重い……自分も」


 千種も、自信がない。


「骸が自分を売り込む時、君達の過去も明かすべき。犬と千種は、CEDEFで学べることを学べるだけ学ぶことに、専念すればいい。諜報に向いていないとしても、戦闘要員として育ててもらえるかもしれないだろ。利点はある」


 諜報は骸に任せて、二人は下手を踏まないように心がけて、自分の成長に集中。








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