空色少女 再始動編
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「紅奈…大丈夫か?具合、悪いのか?」
俯いた紅奈はなんだか気分が悪そうでディーノは慌てて顔を覗く。
「濡れたまんまじゃ寒いだろ!ほらっパーカー!」
そばに置いてあったパーカーをディーノは紅奈にかけてやった。
ようやく紅奈が顔をあげる。
間近にいたため、顔が近い。
その近距離にディーノは硬直した。
ぺたーと顔にへばりついた茶色の髪と同じ色の大きな瞳が真っ直ぐに見上げてくる。
奥の奥まで覗かれているような気分になるが、ディーノはそれどころじゃない。
心臓が鼓膜を破ってしまいそうなほど煩く高鳴る。
紅奈に再会してから─────…この心臓が可笑しい。
「─────…っ」
口を開こうとしたその時だ。
「う゛お゛ぉおおいっ!!!!!!」
声が後ろから轟いてディーノは震え上がった。
「てめえ何してるっ!!!」
「えっ、なにって…」
びしょ濡れのスクアーロが白い砂を蹴って駆け寄り、ディーノの胸ぐらを掴んだ。
「紅奈にっ…!手出しただろ!!」
ギロッとスクアーロは睨み付けた。
ディーノはスクアーロが怒った理由がわからず混乱する。
「てめえ…!とぼけんな!今紅奈にキスしてただろっ!」
「……はぁ!!!?」
意味のわからない発言にディーノは爆発的に真っ赤になった。
傍観していた紅奈は理解する。
ディーノは紅奈の前にいて、ちょうどスクアーロから背中しか見えずキスしているように見えたのだろう。
金魚のようにパクパクと口を動かしていたディーノも時間をかけて理解した。
「ちょっ!誤解だっ!!してない!してねぇから!だいたいっお前の恋人なのにそんなことするわけないだろっ!」
慌てて誤解をとこうとしたディーノの叫びは、後ろに立っていた家光達にも聞かれる。
「まぁ!恋人!」
ぽっと頬を赤らめて嬉しそうに笑みを浮かべたのは、奈々。
ディーノとスクアーロは忽ち悪寒に襲われる。
奈々は気付いていないが隣に立つ家光が般若のような形相で睨んでいた。
あった。
紅奈の恋人だという嘘をつくと問題がある。
家光の耳に入り、殺される。
がしり。
スクアーロと何故かディーノも家光に頭を掴まれた。
二人はガクガクと震え上がる。
「ちょっとこっちで話そうか…?」
般若の顔をした家光に、二人は連行されるのであった。
紅奈はクスクスと笑う。
「コーちゃん!スー君が本命だったのっ?」
「違うよ、お母さん。誤解されてるだけ」
「あらぁ、そうなのぉ」
うきうきしているとこ悪いが、紅奈はサラリと否定しておく。奈々は残念がった。
「もう終わったの?シュノーケルダイビング」
「うんっ!!」
「紅奈は大丈夫?」
満足した様子の綱吉の髪を拭いてやれば、隣にベルが腰掛けて訊く。
「平気だけど、風邪引きそうだから着替える」
紅奈は海水浴をしようと言われる前に、立ち上がり着替えることにした。
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