空色少女 再始動編 413 誕生日会が終わり。飾り付けの片付けは、明日。 家光が入浴している隙をついて、スクアーロはマーモンからのプレゼントを紅奈に渡した。 何が入っているかわからなかったため、誕生日会で開くことは避けたのだ。 何故かずっしりしていた。 「中身は本だな」 キリッと紅奈はスクアーロに向かって、予想を言う。 開いてみれば、的中。 ギリシャ語とイギリス語の勉強に、最適な教材の束だった。 「あたしが次に学びたい外国語の…! マーモンは超能力者か!?」 「超能力者だろうがぁ」 超能力関係なく、ベルが教えただけである。 ちなみに、綱吉の分もあった。英単語のドリルである。 「マーモン……意外と気配り出来るのね」 「いや、将来のためにも、媚び売っておきたいんだろ。マーモン、必死、ウケるー」 将来のため。骸に霧の守護者の座を奪われないためなのか。 「スクもありがとうね。なんか二個もプレゼントもらう形になったな」 「あ? 髪留めぐらい、いいじゃねぇか」 スクアーロが誕生日会で渡したのは、表向きのプレゼントである。 「本当にブームが終わってないか?」 「しつこいなぁ。ちゃんとベルで証明する」 「…ししし」 スクアーロの本当のプレゼントは、戦闘装備用の膝のプロテクター。 稽古で叩き潰されることが決定しているベルが、それをつけた膝蹴りを食らう。紅奈は、仕返しはきっちりやるタイプなのである。 「王子からもー。ホントのプレゼントな」 ひょいっとベルが紅奈の手を取ると、そこに長方形の箱が置かれた。 「え? なんで?」 「べっつにぃー。いいじゃん。開けて開けて」 ベルは、急かす。 包装されていない箱をパカッと開ければ、ナイフだ。ベルの愛用のナイフと同じ形だけど、オレンジのラインが入っているデザイン。 「前使ったロングブーツにも収納出来るやつに変えといた。一つや二つ、持っておいて損はないじゃん」 そう言って、ベルは紅奈の肩に顎を乗せた。 「へぇー、いいね。ありがとう、ベル」 「どーいたしまして♪ おめでとう、コウ」 チュッと頬にキスをした。スクアーロが離れろと手を伸ばすから、ひょいっと避けて座り直す。 「ずいぶんと、あからさまに、尽くしますね…」 出遅れた骸は、別のプレゼントは用意してない。 「持ってるものが違うしぃ」 「クフフ……後日、しっかり叩き潰されてください、紅奈に」 バチバチと火花を散らす二人。 「いいじゃん。夏休みに骸からプレゼントもらったんだから」 「……あれは日頃の感謝の印ですよ…」 ちゃんと骸が贈ったヘアートリートメントとゲーム機は使われているが、別物として受け取ってほしいと複雑になる骸だった。 スクアーロのプレゼント開封は後日。 夜。存分に誕生日会をはしゃいだ綱吉は、もう寝落ちる寸前だ。 ベッドに入れば、三秒で寝てしまいそう。 「コウちゃんのお願い。かなうといいね」 綱吉はそう眠気たっぷりに言うと、ギュッと紅奈にしがみついたまま、眠ってしまった。 そんな綱吉を見つめてから、紅奈は額に口付けをする。 「おめでとう。…おやすみ」 そっとそれを口にしてから、紅奈は薄暗い部屋の天井を見つめた。 カチカチ、と時計の針が進む音が、やけに響く。 少しの間だけ、そうしていたが、紅奈は綱吉の手を握り締めて、目を閉じた。 来年は、彼にも祝ってもらえますように。 [*前へ][次へ#] [戻る] |