空色少女 再始動編
407 ちょっと愚痴
「(イラつく!)」
紅奈はポーランド語で通信が繋がるなり、スクアーロに向かって声を上げた。
返事はポーランド語で返ってくる。
「ごめん。何言ってるか、さっぱりわからない」
〔まぁ……まだ無理だろうなぁ。だからポーランド語より、フランス語や英語を優先して覚えろって言ったじゃねーかぁ……ポーランド語は一番難しいって言われてるぞぉ〕
「難しいって言われると、それからやってみたくならない?」
〔簡単なものから終わらせないのかぁう”おい。
んで? なんだ? そっちにすっ飛んでやろうか?〕
イライラを受け止めてくれるという約束だ。
「いい。ちょっと愚痴っただけー。スクアーロって、カノジョいるの?」
〔ぶふっ!!!〕
水でも飲んでいたのか、盛大に噴いた音が聞こえた。
〔な、なななんだ急に!?〕
「その動揺から、察するにいないか。今後も特定の人は作らなそー」
紅奈を10代目にするまで、一途に奔走するに違いない。勝手なイメージである。
〔だからなんでいきなりっ〕
「うちの学校で嘘で好きって告白するっていう、悪戯する質の悪い遊びが流行っててさぁー。今週三人も女の子が泣いてるの見たの」
〔は、はぁ? なんだそりゃあ……くだらねーな〕
「まったくだよ」
やれやれ、最近の若い子はわからないな、と零す紅奈。
紅奈の目の前で勉強会をしている綱吉含む骸達も、若い子なのである。言わずも、同い年の紅奈もだ。
本人が何を言っているんだ、骸と犬と千種の視線を、紅奈は全く気にしなかった。
(前世の記憶がある故、なのでしょうか……)
自分を子どもだと思っていない節は、前世の記憶があるせい。
気になる。とても気になる。今すぐ訊けないことがもどかしく、悶々してしまう骸だが、とりあえず、勉強会を続けた。
綱吉に教えるついでに、犬と千種にも教えている最中である。
学校に通えない三人の応急処置的なようなものだ。
〔まさか……コウは、ターゲットにされてねぇよな?〕
「ターゲットにされても、小学生の告白に応えると思うの?」
ぐさり。骸に突き刺さった。
ま、まだだ。一応、自分は小学生という年齢ではあるが。厳密には、小学生ではないのである。
それに紅奈には大人びた子どもだという認識をされているのだ。
そう。まだ大丈夫なのである。
「だいたい、このあたしを手紙とかで呼び出すなんて……何様だよって話だよ」
誰も紅奈をターゲットにしていけない。スクアーロ達は、念を送っておいた。
「スクアーロはそんなことないと思うけど……関係を持っては捨てて泣かせちゃだめだよ?」
〔んなことするかーっ!!! そんな心配するなぁあああ!!!〕
「うわ。うるさ」
急いで紅奈はイヤホンを耳から外して、自分の鼓膜を守る。
何かまだ、わーわーと、騒いでいるもよう。
「はいはい。スクアーロは紳士紳士。無駄な心配だったよ」
紅奈は、ちゃんと通信機の向こうのスクアーロに伝わるように言っておく。
(((???)))
骸と犬と千種の頭の上に、はてなマークが浮かぶ。
あのスクアーロが、紳士。
紅奈の認識が、わからない。
「以上、くだらない愚痴。ついでに、ポーランド語の発音の確認してくれる?」
そういうわけで、紅奈は勉強会を仕切る骸に任せて、ポーランド語の勉強を続けた。
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