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空色少女 再始動編
402 ポーカーゲーム



「まあ! シャマル先生に連絡ね!」


 話を聞いた奈々は、すぐさま電話をかけたのだが、繋がらなかったらしい。


「どうしましょう……留守電を残しておいたけども」

「そのうち、かけてくるんじゃないかな」

「じゃあ、それまで、コーちゃんはお部屋で安静!」

「……はぁい」


 居候三人にも移してはいけないので、紅奈は背中を押されるがままに、部屋に戻った。

 骸が飲み物を運んでみれば、紅奈は机について、夏休みの宿題を片付けていたので、肩を竦める。


「奈々さんに、安静だと言われたではありませんか」

「だって、暇だもん」


 鉛筆を取り上げられてしまい、紅奈は大人しくベッドに腰かけた。


「ゲーム機、持ってきましょうか?」

「うーん。骸が何か相手してよ」

「なんなりと」

「じゃあ、トランプ。ポーカーゲーム教えて」


 骸は目をまん丸に見開く。
 そんな骸を見上げて、ニヤリ。


「ずっとやってないと、腕が鈍るんじゃないの?」

「……クフフ。いいですよ」

「あとマスクも持ってきて」

「マスク?」

「風邪なら、移さないためにも」


 なるほど。骸はすぐに取ってきては、ポーカーについて教えた。

 何度かやっていくうちに、すっかりルールを理解した紅奈は提案する。


「お金賭けない?」


 マスクの下でも、笑いかけていることがわかった。


「いいですが……生憎、持ち金はイタリア硬貨や紙幣しかなくて」

「じゃあ、とりあえずあたしが貸すから、それでやろうよ。あとお菓子ばかり買ってたから、硬貨が貯まってるんだよね。それから徐々に賭け金上げようよ」

「クフフ……賭けた分、巻き上げられても知りませんよ?」

「やってやろうじゃん」


 そういうことで、二人で挟んだコタツテーブルの上に、どーんっとお金が並んだ。


 8歳の少女と10歳の少年の賭けポーカー、開始された。


「くそー、負けたぁー」

「クフフ。いただきますね」


 突っ伏する紅奈。
 お金を回収する骸。


(危なかった……)


 結構ギリギリの戦いだった。

 紅奈はマスクをしているし、表情から得られる情報が全くなかったし、そもそも紅奈は直感力も観察力も優れている。

 骸とは経験の差が違うだけで、備え持つ能力からして紅奈が上手になるのは、目に見えていた。

 それも経験で培った駆け引き次第ではある。

 しかし、やはり、紅奈。心理戦ですら、強敵。

 今回の紅奈の敗因は、微熱だ。
 少々、直感が鈍っていた。


(病気の想い人からお金を巻き上げるのは、心が痛みますが……意地がありますからね)


 負け続けてはいられないのである。意地だった。


(まぁ……この得られたお金は、紅奈のために使いますがね)


 どうせ、使い道に困っていたお金だ。些細とはいえ、自分達ばかりに使われている。それを紅奈のために、代わりに使うまでのこと。


「んぅー。頭使ったからかな。熱っぽさを自覚してきた……」

「おや。……おやおや。本当に熱が上がっているようですね。横になりましょう。また飲み物を持ってきます、あと体温計ですね」


 前髪の下の額に触れてみれば、骸も先程より熱いと感じる。

 紅奈がベッドに入った姿を見てから、骸は取りに下の階に行った。

 計ってみれば、0.2度上げっている。まだ微熱の域ではあるが、紅奈の場合はこれから徐々に上がっていくパターンが多いらしい。



 パターン通り。



 夜には、37.7度まで、熱が上昇。


 部屋の外で覗き込む犬が、心配で大騒ぎ。

 不安を煽られた綱吉が、涙目になる。
 千種と骸で、犬を静かにさせては、綱吉を宥めた。

 その様子をぼんやりと眺めては、紅奈は重い瞼を閉じる。











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