空色少女 再始動編
400 腹チラ
翌朝は、帰国したふりをしたスクアーロと、手合わせ。
「っ! う”お”ぉいっ!! いいじゃねーかぁ!! だが、まだまだだぜぇえ!!」
紅奈のブームである膝蹴りを受け止めたスクアーロは、高く評価はするが、紅奈の成長はまだまだ、これからである。
木剣をぶつけ合っては、紅奈は隙をついての膝蹴り。
足を崩すことも、狙ってみたが、なかなか決まらない。
「ほう……。紅奈もまだ勝てないと言ってましたが、やはり実力は上なのですねぇ」
骸は独り言のように、零す。
実際、返事がなくても、気にしなかっただろう。
「とーぜん。そのうち、追い抜かれるぜ」
ししし、とベルは笑った。
紅奈は、まだ、勝てないと言っていたが、やはり部下の強さを超えるのだろう。
「んじゃ、見てるだけじゃあ暇だし? オレ達も一戦やろうじゃん」
「おや」
ベルからの提案。
「うっかり殺しちゃったら、ごめーん」
殺意ありありなベル。
「おやおや。こちらこそ、息の根をうっかり止めてしまったら、すみません」
挑発を挑発で返す骸は、微笑みもついでに返してやった。
「あ〜! クソ暑い!! スク、髪切ってい!?」
「だめに決まってんだろ!?」
一戦を終えた紅奈とスクアーロ。
束ねた髪が鬱陶しいと紅奈は、払いのける。
願掛けなのだから、しっかり就任式まで伸ばしてほしいものだ。
しかし、暑いのはスクアーロも同意。空を見上げれば、もう眩い太陽が近い。目が眩む。
「紅奈っ!!」
骸の声に振り返る。やけに切羽詰まった声だと思えば。
「止めてっ! くれませんかっ! ねっ!」
「あ”ぁは〜っ!」
絶賛暴走中なベルと、防戦一方な骸。
ベルも骸も同じくらい血を流してはいるが、ベルは骸の息の根を止めようと、攻撃の手をやめない。
骸はその攻撃を防ぐために、修羅道を使い続けている状況。
何やってんだ、コイツら。
紅奈とスクアーロは、呆れて傍観してしまった。
スクアーロと戦ったあとのため、紅奈は呼吸が荒かったが、ふぅーっと深く息を吐く。
それから持っていた木剣を、槍のようにぶん投げた。
ガツン!
ベルのこめかみに、クリティカルヒット。
ベルはぶっ倒れては、動かなくなった。
「まったく。手合わせするなら、怪我しないでくれる?」
「…すみません……」
ぺたん、と地面に座っては、骸は力なく謝罪。
「んで? この場合、どっちが勝ったんだぁ?」
完全に気絶したベルを覗き込むスクアーロは、念のため、息を確認した。生きている。問題なし。
勝敗について、骸は少し考え込んだ。
「……引き分けでいいですよ。日を改めて、負かせます」
肩を落とす。勝ちたかったが、暴走ベルには勝てそうになかったため、紅奈に助けを求めたのだ。
「ベルは、殺しの天才。本領発揮の暴走状態で致命傷を負わなかっただけ、上々じゃないの?」
くいっと紅奈に顎を上げられて、骸は顔を掠めた傷を確認された。
「…彼をずいぶん買っているようですね」
「うん。君と同じ。将来に期待中」
逆光でよく見えなくても、紅奈は笑っていることはわかる。
頬を伝う汗が眩しい。
「日々精進していきます」
眩しいと目を細めては、必ず強くなると決意を固めた。
紅奈は背伸びをすると、自分の服の裾を引き上げて、頬から首元を拭う。
半袖シャツ一枚の紅奈の腹部を、間近で見てしまった骸。
一切、日焼けしていない色白のお腹。
ギョッとしたあと、もげるような勢いで、顔を背けた。
「う”お”ぉおおいっ!! 紅奈! タオルはこっちだぞ!?」
慌ててスクアーロが、肌を晒すことを止める。
出血しすぎた気がした骸は、ちょっと貧血のような症状を覚えた。
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