空色少女 再始動編
399
「そういえば、ボンゴレの守護者について、教えてもらいました」
「あ”? なんでまた?」
「クフフ。ボスが僕を霧の守護者にご所望だからですよ」
骸は、話題を変えてみた。
幹部に望まれていることを、自慢。
「は!? 霧は、マーモンじゃねーの!?」
ブンッと勢いよくベルが振り返る。
距離を縮めたから、会話が聞こえたようだ。
「クフフ、紅奈が僕がいいと言うので、霧の守護者の座は努力して勝ち取る所存です」
「はぁ!? ぽっと出のくせにっ!」
「はいはい。マーモンと仲が良いからって、そう怒らないの」
「別に仲良くないし!」
腕を両手で掴んで放そうとしないベルを紅奈は、手を叩いてやって宥めた。
「数年先で、争奪戦でやればいいじゃない。実力を示した方が、あたしの霧の守護者」
ギリギリと歯ぎしりをしては、ベルは骸を前髪の下から睨みつけた。
「守護者は、相応しい者が選ばれて、通常は継承式で渡すそうですが……相応しいという選抜は、一体誰がするのですか?」
「現ボスと門外顧問のボスの二人。次期ボスのそばにいる者から、該当する者を選ぶんだよ。多分。ボンゴレファミリー以外からも選ばれることもある」
「え? ファミリー以外からもですか?」
「そ。」
紅奈はボンゴレの話をしているので、少し警戒したように周囲を見回す。
「ファミリー内だけではなくてもいいけど、守護者に選ばれた者は危機の時には招集するの。それで危機を乗り越える。そんな伝統なのよ。初代から続いてる」
尾行もないし、監視もなし。いつも通りである。
「オレは、紅奈の嵐の守護者だしー。常に攻撃の核となり休むことのない怒涛の嵐。……つーことで、めった刺しにしてやんよ!」
「やめんか」
すちゃっとナイフを構えたベルだったが、紅奈のチョップを受けて、止められてしまった。
「暗殺してやる」とぼそりとベルが呟けば、「聞こえてる」と紅奈はまたチョップを落とす。
骸が霧の守護者になって幹部になるなど、認めない。
「では、スクアーロは、なんの守護者ですか?」
「スクアーロは、雨」
「戦いを清算し、流れた血を洗い流す鎮魂歌の雨。だなぁ、う”お”ぉおいっ!」
雨の守護者候補なスクアーロは、声を高らかに上げた。
「……血で血じゃ洗い流せないじゃん」
「本当に相応しいのですか?」
「喧嘩買うぞクソ餓鬼どもぉ!!」
嘲笑うベルと骸。嫌な餓鬼コンビが出来たもよう。
「キング〜、他は?」
「ん? どーしようかなぁ……決めてないな。のちのち、相応しい候補、見付けるかなぁ…」
「紅奈のことだぁ……どうせひょいひょい、新しい部下を引っ付かせるんだろ?」
「犬も歩けば棒に当たるもんねー」
「その例えは、いいものなのですか……?」
紅奈の優先は、今はXANXUS。
守護者選びはともかく、XANXUSを救出するためのボンゴレリングを手に入れる手立てを、考えなくてはいけない。
紅奈は、陽炎のように揺らめく先を見据えた。
「むしゃくしゃしてるから、一戦やってから買い物行かない?」
「「!?」」
「紅奈……家光さんがいる間は、避けるべきだって言ったのは貴女ですよ?」
むしゃくしゃしている紅奈からの提案。
骸は一応、紅奈の決めたことを思い出させておく。
そうだったー、と紅奈は、一先ず落ち着いてくれた。
スクアーロとベルは、暫くホテルに泊まっては、沢田家を出入りしていたのだが、家光により帰国を急かされた。
結局、夏休みは旅行に行かないとのこと。また仕事に行かないといけない。骸達もいる、という後付けな理由。
また仕事に出掛けていく家光を、二階の窓から見下ろしつつ、紅奈は顎に手を添えて考え込む。
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