空色少女 再始動編
286 シュノーケル
「……何故こうなった」
「何故って…いいって言ったじゃん、紅奈」
ジリジリと照らす太陽の陽射しを鬱陶しく思いながらも、紅奈はこの状況を理解出来ずにいた。
ボケッとしているうちに、何故か海水浴からシュノーケルダイビングの体験に変わったらしい。
「もうっ!コーちゃんたらっ、日焼け止め塗らないと痛くなっちゃうわよ」
「あ、お母さん。オレがやる」
「ベルフェゴール!オレがやる!」
「…触んな」
奈々が日焼け止めを紅奈に渡そうとすれば、ベルがそれを取った。
それを家光が阻止したが、紅奈から拒絶される。
パパンは大ダメージで撃沈。
奈々と紅奈はビキニ。
紅奈はこの気温でも寒く感じるためパーカーを羽織っている。
「スク。塗って」
「…!!」
オレは紅奈を怒らせたのだろうか。
と思えるほど紅奈の行動は家光の恨みを買う。
家光とベルに睨まれつつ、紅奈の身体に日焼け止めを塗った。
色白の肌。
小さな身体に塗っていく。
(………これは何かの試練なのか…う゛お゛ぉおいっ!?)
露出の高いビキニを着た我がボスに日焼け止めを塗る。
これはなんの試練なのだ。
なんの試練なのだ!
ワナワナと震えつつもこの試練をスクアーロは乗り越えたのだった。
「ちゅのーけるだって!」
「シュノーケルだよ。しゅ」
シュノーケルダイビングの説明が終わり準備体操も終えた綱吉と手を繋いで紅奈はパーカーを脱ぐ。
大丈夫かな。
紅奈は激しく綱吉を心配した。
経験者が珊瑚を案内してくれるのだ。
浅瀬の方だから溺れたりしないだろう。
海水の匂いがする。
「待て、紅奈。髪、邪魔になるだろ」
「…お前は泳がないのか?」
「オレはいい」
「…鮫のクセに泳げないのか」
「う゛ぉ゛おおいっ!泳げるぞぉお!」
海に入る前にスクアーロが引き留めて、紅奈の髪を青いゴムでまとめた。
スクアーロだけシュノーケルダイビングに参加しないそうだ。
「紅奈、行こうぜ」
ベルに手を引かれ、波打ち際に足を踏み入れる。
少し冷たい海水。
案内人の指示にしたがって、沖に歩く。
少し怖がって綱吉が引っ付いた。
ベルはそれをからかう。
紅奈がチョップを食らわせた。
紅奈と綱吉の胸が浸かるくらいの深さでガイドが潜るよう指示。
「ツナくん?準備オッケー?」
「う、うんっ」
「ししっ。じゃあ…せーのっ」
ベル、紅奈、綱吉は手を繋いだまま、一緒のタイミングで潜った。
何処までも広がる青い海面を突き破れば、穏やかな海底がシュノーケル越しに映し出される。
まだ浅いためか、うんと先まで太陽の陽射しが差し込んでいてきらびやかに光っていた。
「ぷはっ!」
先に綱吉が海面を出る。
紅奈も上がれば、がしりと綱吉が掴んできた。
「すっげぇー!!!キラキラしてたね!!コーちゃん!」
「…うん、そうだね」
シュノーケルの中の瞳の方がキラキラと輝いている綱吉。紅奈は笑みを返して顔についた海水を拭う。
(意外に平気だったな…)
次の指示をぼんやり訊きながら紅奈はポツリと心の中で呟く。
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