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空色少女 再始動編
372 苦手



「わざわざ遠出しなくても隣町に遊園地あんのに」

「んなちっこいのじゃなくて、でっかい遊園地で楽しもうぜ」


車をレンタルして五人で、遊園地へ。(ベスターはお留守番)

隣町にはない日本一のお化け屋敷とジェットコースター目当て。


「きゃあああああああああっ!!」


悲鳴が上がるジェットコースターの前。

綱吉は震えて紅奈にしがみついているが、紅奈は欠伸を漏らす。


「う“お”ぉいっ! 紅奈。これに乗るかぁ?」

「……スクアーロ」


人気の最強絶叫マシーンは、行列が出来ているが、乗る気満々。

しかし、紅奈は不機嫌に睨み付けた。


怖くて乗れないのか? と思いきや。


「スー君。身長制限でこの子達、だめなのよ?」


奈々は苦笑して教えた。


「!!!」


痛恨のミス。


「あーあ。乗りたかったな」


残念そうに見上げる紅奈。


「中学の入学祝いにもう一度来ようぜ」


ちゃっかりベルは約束した。


「じゃあお化け屋敷!」


お化け屋敷なら身長制限はない。

早速お化け屋敷へ。


悲鳴が響くお化け屋敷の前で、綱吉は震えて紅奈にしがみついているが、紅奈は欠伸を漏らす。


むぎゅう、と綱吉は完全に怯えて入ることを拒否して、紅奈を離さない。

お化け屋敷は一組二人と決まっている。


(……来た意味ねぇっ…!!!)


結局、お子様なアトラクションしか乗らなかった。


「そうだぁ! 動物園に行こうぜぇ!!」


春休みの予定、続いて動物園。


「ベスターも連れてきたかった」

「捕獲されちゃうぜ」

「紅奈。金の蛇に触れるらしいぜ?」

「蛇よりライオンに触りたい」

「どんだけライオンが好きなんだぁ」


動物園で順番に回る。
綱吉は目を輝かせて紅奈と手を繋いで楽しんだ。


蛇と触れ合うコーナー。

「おー」と平然と大蛇を首に巻き付けている紅奈。綱吉は怯えている。

蛇は怖くないようだ。


兎や雛に触れ合うコーナー。

当然紅奈は怯えない。


色んな動物の赤ん坊にも興味津々の目を向けて、触れていく紅奈。

惨敗だった。


「…紅奈ぁ…お前、嫌いな食べ物とかいねーのか?」

「んー、ない。」


食べず嫌いさえない。
奈々の料理もきれいにたいらげる紅奈と綱吉。


「紅奈。苦手なもんとかねーの?」


痺れを切らして、ベルは直球で訊いた。


「苦手…………?」


少し考える紅奈。


「ない」


思い付かなかった紅奈は、きっぱり言った。


「お母さーん、紅奈の苦手なもん知らね?」

「なんでてめぇは気安くそう呼ぶんだぁ?」


ベルは奈々に訊く。
奈々をお母さんと呼ぶのは、定着済みである。


「コーちゃんの苦手なもの…? …パパかしら!」

「………」

「………」

「………」


紅奈はすました顔で食事を続けた。

沈黙をするスクアーロとベル。


確かに嫌いなものは、家光だった。







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