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空色少女 再始動編
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紅奈の料理の腕前は、母親譲りだった。


「…美味い」

「美味い」


紅奈、一人で作った五人分の夕飯。

完璧主義者な一面を持つ紅奈らしい。

盛り付けも丁寧。味付けもナイス。

素直にベルとスクアーロの漏らした感想にも、反応しない紅奈はすまし顔。


顔よしい、頭よし、運動よし、料理もよし。

どこまで完璧なんだ。


こうなると紅奈の苦手分野が気になるところだ。


あ、一つある。
紅奈は病弱だ。

病弱。それが完璧な紅奈の短所とも言える。


「なぁ、綱吉。紅奈の苦手なもんって知らね?」

「にがて…?」


紅奈が先にベスターとお風呂に入っている隙に、ベルは綱吉に尋ねた。

綱吉の脳裏に浮かぶのは、紅奈のトラウマ。
しかしそれは他人に話さない約束だ。

ブンブンと、綱吉は首を横に振った。


「なんかねーの? 虫が怖いとか」

「んー?」


首をこれでもかと捻ったが、綱吉には思い当たらなかった。

昔から紅奈に助けられてきた記憶しかない。


勉強であっても苦手分野などない。
運動は進んでやるため、逃げ出す種目は存在しない。


苦手な虫も動物もいない。


「いくらなんでもあるだろ、苦手なもん」

「そうだなぁ…」


苦手なものを目の当たりにした紅奈のすまし顔が崩れた瞬間が見てみたくなったベルとスクアーロ。

悪意はなく、単にそんな可愛い紅奈が見たいがため。


「乗り物とかは?」

「車も飛行機も乗るじゃねぇかぁ」

「観覧車とかさ」

「高いところ好きだろ、紅奈は」

「狭いとことか」

「閉じ込められてもへっちゃらだろ」

「あら、遊園地の話?」


そこに奈々が観覧車と聞いて割って入ってきた。

いや、全然違う。


だが、遊園地でベルとスクアーロは思い付く。

遊園地には悲鳴が上がるアトラクションがあるではないか。


「う“お”ぉいっ!! 綱吉! 遊園地に行きたいか? 行きたいだろ!?」

「えっ?」

「うしし、決まり。遊園地にレッツゴー♪」


無計画だった春休みの予定が立った瞬間。





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