[携帯モード] [URL送信]

空色少女 再始動編
370
「え? 紅奈、作れんの?」


キッチンに向かう紅奈を見送ったベルは、声をひそめて奈々に訊いた。


「ええ、いつも手伝ってくれてるのよ? 一人でも作ってくれるの」


嬉しそうに奈々は答える。
料理が出来る紅奈。
意外だ。

奈々の大量の料理を覚悟していたが、紅奈の手料理が食べられる。


「紅奈ちゃん、二人が来たら自分で作るって張り切ってたのよ」


そっと奈々はスクアーロとベルに教えた。


「紅奈ー、手伝おうか?」


ベルは紅奈に声をかける。

しかし紅奈は背を向けたまま反応をしない。

無視?


「紅奈ちゃん、音楽聴いてるの。お友だちに貸してもらった音楽プレーヤーで」

「…友だちって誰?」

「クラスメイトの入江くん」


友だち。
予想していたが、やはり男の友だち。

そもそも紅奈の女友だちが存在しているとも思っていない。


紅奈は男友だちばかり。


ムスッと唇を突き上げたベルはキッチンに向かって、紅奈に近付く。紅奈の耳にはまっているイヤフォンを取った。


「なに?」

「それ返せよ」

「は?」

「借りもんなんだろ、返せ」

「…煩いんだけど」


ベルの変ないちゃもんに、紅奈は手にしていた包丁を向ける。

タイミングが悪かった。

「気に入ってるんだよ。正一くんもいつまでも貸してくれるし」

「…なんで、いつもいつも紅奈の周りには男ばっかなんだよ」

「そんなことない。いつもクラスメイトに囲まれているわ。ね、ツナ君」


紅奈に包丁を突きつけられるベルは、下がりながら刺々しく言う。


「うん! コーちゃん、人気者!」


声をかけられた綱吉はベスターから、顔を逸らして笑顔で頷いた。

人気者。
そのワードにますます不機嫌になる。

紅奈に悪い虫がつく。


(媚売りやがって…)


友だちが貸してきたという音楽プレーヤーを睨み付けるベル。

猫被りをやめたから油断していたが、魅力的な紅奈は放って置かれない。


何か策を。
と考えるのはベルだけではない。

スクアーロもだ。


仲の良い女友だちが一人いれば安心出来るが、目の届かな学校で男だらけの取り巻きを作っていそう。




[*前へ][次へ#]
[戻る]

[小説ナビ|小説大賞]