空色少女 再始動編
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「え? 紅奈、作れんの?」
キッチンに向かう紅奈を見送ったベルは、声をひそめて奈々に訊いた。
「ええ、いつも手伝ってくれてるのよ? 一人でも作ってくれるの」
嬉しそうに奈々は答える。
料理が出来る紅奈。
意外だ。
奈々の大量の料理を覚悟していたが、紅奈の手料理が食べられる。
「紅奈ちゃん、二人が来たら自分で作るって張り切ってたのよ」
そっと奈々はスクアーロとベルに教えた。
「紅奈ー、手伝おうか?」
ベルは紅奈に声をかける。
しかし紅奈は背を向けたまま反応をしない。
無視?
「紅奈ちゃん、音楽聴いてるの。お友だちに貸してもらった音楽プレーヤーで」
「…友だちって誰?」
「クラスメイトの入江くん」
友だち。
予想していたが、やはり男の友だち。
そもそも紅奈の女友だちが存在しているとも思っていない。
紅奈は男友だちばかり。
ムスッと唇を突き上げたベルはキッチンに向かって、紅奈に近付く。紅奈の耳にはまっているイヤフォンを取った。
「なに?」
「それ返せよ」
「は?」
「借りもんなんだろ、返せ」
「…煩いんだけど」
ベルの変ないちゃもんに、紅奈は手にしていた包丁を向ける。
タイミングが悪かった。
「気に入ってるんだよ。正一くんもいつまでも貸してくれるし」
「…なんで、いつもいつも紅奈の周りには男ばっかなんだよ」
「そんなことない。いつもクラスメイトに囲まれているわ。ね、ツナ君」
紅奈に包丁を突きつけられるベルは、下がりながら刺々しく言う。
「うん! コーちゃん、人気者!」
声をかけられた綱吉はベスターから、顔を逸らして笑顔で頷いた。
人気者。
そのワードにますます不機嫌になる。
紅奈に悪い虫がつく。
(媚売りやがって…)
友だちが貸してきたという音楽プレーヤーを睨み付けるベル。
猫被りをやめたから油断していたが、魅力的な紅奈は放って置かれない。
何か策を。
と考えるのはベルだけではない。
スクアーロもだ。
仲の良い女友だちが一人いれば安心出来るが、目の届かな学校で男だらけの取り巻きを作っていそう。
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