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空色少女 再始動編
369 春休み
春休み。

家光は仕事に出掛けたきり、帰らなかった。

有言実行。
ベルはスクアーロと遊びに来た。
ついでに。


「ベスター!」


猫専用のカゴのの中に入れられたホワイトライガーも一緒。

窮屈な箱から抜け出せたベスターは、喜んでご主人さまに飛び付いた。


「あらー? 猫さん? 可愛いわねー」

「ライガーだよ、お母さん」

「犬みたい!」


ベルとスクアーロを出迎えて駆けてきた奈々も紅奈も綱吉も、ベスターに釘付け。

放って置かれる客人だった。


ベスターがXANXUSに成り代わり、ヴァリアーの支配者となって暴れていたことを聞いていた。

だからまだベスターが幼いうちに、紅奈は連れてくるように言ったのだ。

紅奈の前ならベスターはいい子だ。


「なぁ、オレに歓迎は?」

「なに突っ立ってる。入れ」


ベルが両腕を広げたが、紅奈はベスターを抱えてリビングに行ってしまった。


扱いが…。


「春休み中いてもいいから」


リビングのソファーで寛ぐ。
紅奈はベスターと見つめって、制止する綱吉は眺めていた。

元々、小型犬も苦手な綱吉。触ることに躊躇している。
ベスターは頭がよく、そんなご主人様の弟が意を決して触るのを待ってやっていった。

そんな面白い光景を眺めた。


栗色の長い髪をポニーテールで束ねているそんな紅奈を、ベルは眺めている。


ベスターを見つめている綱吉。
綱吉を見つめている紅奈。
紅奈を見つめているベル。


そんな妙な光景を眺めるのは、スクアーロだった。

暇だから奈々の家事を手伝おうと、スクアーロは腰を上げる。


「客人は座れよ」

「え…いや…だがぁ」

「今日はあたしが料理作る」

「…は?」

「なんだよ? 文句あんの?」


それに気付いて紅奈が止めれば、スクアーロは間の抜けた声を出す。

その反応が気に食わなかった紅奈が睨み付けた。


「こら! コーちゃん、そんな態度は…め!」

「…はい」


コツン、と後ろから紅奈は奈々に小突かれる。前々から言葉遣いを注意されていた。


「あたしが作るから…」


立ち上がる紅奈は、スクアーロにニコリと笑顔を向ける。


「(座りやがれ、カス)」


ピッ、と人差し指を下ろして、イタリア語で告げた。


「スクアーロもベルも、ベスターとツナと遊んでてね」

「……おう…」


スクアーロは指示通りに、腰を下ろす。
久々のライオンの猫被り。




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