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空色少女 再始動編
368 弱さ



「ぷはっ!」


浸かっていたお湯から紅奈は顔を出して、酸素を吸い込んだ。
綱吉との入浴タイム。

風呂でさえ満足に潜れやしない。


「コーちゃん…。ジコのせいでおよげなくなっちゃったの…?」

「……うん」


綱吉に問われて紅奈は正直に頷いた。


「トラウマってビョーキなの?」

「…病気ってほどじゃないよ。あたしが弱いだけ」


頬杖をついて呟く。


「水の中に入ると、思い出して………パニックになっちゃうんだ…」


水の中に潜ると、海底で溺れた感覚と彼らを失った恐怖に襲われる。

それでパニックになるのだ。


「…あたしが弱いから…」


心が弱い。
それは前世からずっと。

弱いままだ。


「だいじょうぶっ! ぼくが強くなって、コーちゃんを守るから!」

「……」

「ぼく、しゅごしゃになるから!」


にこ、と綱吉は笑いかけた。


守護者。

綱吉の将来の夢。


紅奈も笑みを返す。


「もう守護者だよ…。ツナ君があたしの心を守ってくれるから」


そんな二人の会話を、浴室の外から家光は聞いていた。


トラウマについても何も話さない紅奈は、やはり綱吉には口が軽い。

綱吉にしか踏み入らせない。

両親である奈々と家光には、見せない弱音。


家光には決して踏み入らせない。

娘との距離は未だに縮められない。






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