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空色少女 再始動編
277 リボーン




死んだ時のことは覚えてない。
ただ怖かった、それだけ。
死んだあとは楽だとばかり思ってたけど実際は違った。


あたしは暗闇の中、一人きり。
ずっと。


一分?五分?十分?一時間?
一日?一年?十年?百年?千年?

永遠と感じぐらい何もない空間に一人きり。


まるであたしの魂だけが暗い箱の中に閉じ込められたよう。


助けて


叫んでも自分の声が聴こえない。


一人にしないで


誰もいない、誰にも届かない。


無に等しい空間。
自分の存在さえも無に感じた。


怖い、怖い。

あたしはいないの?いるの?

怖い、怖い。

誰か、誰か。

一人にしないで。

怖いよ、怖い。


無の空間。
時間さえもわからない暗闇の中で


光が射し込んだ。


暖かな光りに今まで自分が凍えていたことに気付いた。


足を抱えていたあたしに何も言わずに手を差し出す男が一人。


彼に救われた。
彼があたしを救ってくれた。


あたしは彼の手を掴んだ。






目を覚ましたら、隣には赤ん坊がいた。

すぐそばに赤ん坊がいた。


一緒に生まれた双子の弟。




無邪気に笑いかけてくれた貴方がいるから、あたしは独りじゃない。







空のように強く凛々しく自由に──────────。




















色の光。


沢田紅奈は、突然光だしたそれに目を向ける。


目の前にいる若い女性・アリアがネックレスとしてつけていたおしゃぶりが光った。


「ちゃおっす」


彼特有の挨拶。
唐突に現れたのは、スーツを着こなした赤ん坊。胸にはアリアと色違いのおしゃぶり。

黄色のアルコバレーノ・リボーン。


「待たせて悪かったな、アリア」

「いいえ、退屈してなかったわ」

「こんなところで再会するなんて奇遇だな、紅奈」

「…そうね、奇遇ね」


口振りからしてアリアとリボーンは待ち合わせをしていたらしい。


「髪が伸びたな、似合ってるぞ」


ニッとリボーンは紳士的な言葉で誉める。
「あら、ありがとう」と礼儀として返してから紅奈はもう一度空の虹を見上げた。


「二人は知り合いなのか?」

「ええ、去年日本行きの飛行機の中で会ったのよ」


リボーンの質問にアリアは答える。

どうやらマリアは紅奈ことは黙ってくれるようだ。


マリアとの話は済んだし、これからリボーンと用があるらしい。

弟達を待たせているから紅奈はおいとましようと椅子から降りた。


「帰るのか?」

「邪魔だろうから」

「そんなことねーぞ。そうだ、暇ならオレの連れの相手をしてやってくれ」

「連れ?」


会って二回目で随分と図々しい頼みをしてくるリボーン。紅奈は首を傾げたが、その連れはすぐに現れた。


「リボーン!!なんでお前はいつも先に行って置き去りにすんだよっ!」


バシャバシャと水溜まりを踏みつけて近付いたのは金髪の少年。
リボーンが現在家庭教師をしているディーノだ。


リボーンに怒鳴り付けてから紅奈を一度見たが、またリボーンを睨み付ける。


するとまた紅奈に目を向けた。


丸めた目が、見開く。


紅奈っ!!!?


ディーノはオーバーリアクションで震え上がった。
紅奈は呆れてそっぽを向く。

連れは彼のこと。


「ひ、久しぶり!髪が伸びてたからっすぐわからなかった!」


ぱぁっと目を輝かして笑みを浮かべるディーノ。
その笑みは、紅奈の弟である沢田綱吉に似ていると感じた。


「紅奈は………また一人で海外に来たのか!?


前回会った時は紅奈が一人イタリアに行った。
今回も一人で飛行機に乗り込んで来たのかと思い、ディーノはギョッとした。

反応が大袈裟すぎる。


「家族旅行よ」

「父親も一緒か?」

「…ええ、その父親が待つホテルに行かなきゃ」


素直に話せば、リボーンから父親について訊いてきた。その父親はともかく、綱吉達を待たせてるんだった。






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