†piccio notte†
†005
「ん………」
瞳を開けば、綺麗な部屋のベッドの上に寝ていた。
暗い赤に金色の装飾の壁紙の彼の部屋。
起き上がれば、彼が居ることに気付く。
「おはよう、小夜」
椅子に腰掛けてこちらを見つめ微笑みを向ける彼。
「これを着るといいよ」
彼は服をベッドに放り投げて、言った。
「着替え終わったら、こっちに来いよ」
部屋を出る前に、彼はそれだけを言い残して行った。
私が何の反応を示さない内に。
露出の高いその服に少々顔をしかめつつもとにかく、着替える事にした。
。
傷跡が残る、その首を隠したかったのに襟はない。
脱いだ制服を抱え、部屋を出る。
暗い部屋。
玉座のような椅子に彼はまた座っていた。
「おう、可愛い」
頬杖をついてこちらを眺める彼。
「……あの」
「ああ、それは」
彼の前まで来て、脱いだ服をどうすればいいのかを聞こうとすれば彼は服を掴み、あの沙羅葉と呼ばれる彼女に投げつけた。
「捨てとけ」
「!…何故ここまで人間の小娘をこんな扱いを!!」
納得できない彼女は声を上げた。
「もう人間じゃない、吸血鬼<ヴァンパイア>さ」
その発言は、感情を狂わせる。
そうだ。
何故自分はこれほど落ち着いている?
家族が殺されたと言うのに。
人間じゃない?
私が?
ヴァンパイア?
悲しみ、怒り、混乱。
ザクッ!!
向こう側の扉の右上の壁が見えない爪に引き裂かれたように割れた。
「え…」
「ば…馬鹿な……」
沙羅葉は愕然とした。
沙羅葉の後ろにいる暗がりで視えない数人の者も同じ反応をした。
「元人間が……その様な力を」
怯えたように震えた声で沙羅葉は言う。
「小夜」
彼に手を引かれた。簡単に力が抜けた私の体は彼の足元に崩れる。
「ダメだよ、いきなりそんな力……疲れるからね」
彼はそう言い、私を抱き上げた。
「これでわかっただろ?」
沙羅葉達に向けて言った。
「奴らに自己紹介しろ、小夜」
「……工藤………小夜」
「良い子だ」
彼は頭を撫でてきた。
「文句がある奴は言え、今直ぐにな」
返ってきたのは沈黙。
「決まりだ。彼女を仲間と迎える」
悠遠に届く声で彼は告げた。
闇ヲ蠢ク…
吸血鬼達ニ……
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