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ひらひらの小説
第2回アンケートファイト 日ノ本零子VS白鳥絵理子
第2回アンケートファイト 日ノ本零子VS白鳥絵理子

零子と絵理子がこうして試合をすることになったのにはわけがある。
まずは、そのことを振り返ろう。

『ランブルローズなんて所詮遊びなんでしょう。 私だったら1分とかからないでKOしちゃうわね』

テレビの画面では一人のレースクイーンがランブルローズについて批判的な意見を述べている映像が流れていた。
零子はその映像を見て、不愉快に感じてしまった。

「(何よ・・・ あんな言い方しなくてもいいじゃない・・・)」 

零子がそんなことを考えていると控え室に来ていたデキシー・クレメッツが零子に話しかけた。

「あぁ、白鳥絵理子ね。 最近、あんたの噂を広めて回ってるみたいよ」
「どんな噂なの?」
「例えば、日ノ本零子は弱いくせに八百長で勝ってるとかね」

デキシーの話した絵理子の言葉に零子は拳を握り締めていた。

「でさ、あたしのつてを使って、あんたと白鳥絵理子の試合を組んだからそこでケリをつけなさいよ」
「ありがとう、デキシー。 私、白鳥絵理子には負けないから」

零子はデキシーにガッツポーズを取りながらそう言った。

そして、試合当日、絵理子と零子は試合前の確認をしていた。

「ふーん、本当に来たのね。 わざわざKOされに来るなんてご苦労なことね」
「人を呼んでおいてそれはないんじゃない。 言っておくけど負ける気ないからね」

零子は絵理子の挑発に挑発で返していく。
しかし、絵理子は挑発には乗らず、不敵な笑みを浮かべている。

「八百長レスラーなんてすぐにKOできるけど、綺麗な顔や身体でリングから下りられるなんて思わないことね」

絵理子の言葉に零子は息を飲んでしまう。
絵理子からは不気味な殺気が漂っている。

試合開始までそれぞれの控え室に待機しておけということで零子はセコンドとして来てくれたデキシーと藍原誠を連れて、さっさと控え室へ向かった。

「先輩、どうしたんですか?」
「えっ? ごめんね、誠ちゃん。 白鳥さんが私にあそこまで敵視してくる理由が分からなくて・・・」

零子は絵理子の笑顔の裏にある敵意について考えていたのだ。

「そんなこと気にしないであの女をKOしちゃえばいいのよ」
「そうだよね・・・ 私らしくないこと言っちゃったな・・・ よーし、やるよ!!」

零子は胸の前でボクシンググローブを打ち合わせると気合いを入れ直した。

一方、絵理子の控え室ではすでに準備が済んでおり、精神統一をしていた。

「(あの女はいつもいつも私よりも目立って目障りだったのよ! 今日、この試合で思いっきりボコボコにして醜くしてやるわ!!)」

絵理子は心の中でそんなことを考えながら深呼吸していく。

そして、二人がリングの上に上がり、試合前の注意を受けていた。
しかし、絵理子は相変わらず挑発的な笑みを浮かべて零子を見ている。
零子は絵理子のそんな表情に動じず、じっと見つめている。
レフェリーによる注意が終わり、二人は自分のコーナーへ戻っていった。

「先輩、頑張ってくださいね!!」
「ありがとう、誠ちゃん。 私、全力で頑張ってくるよ」
「できれば、1ラウンドでKOしちゃいなさい」

零子はデキシーの言葉に苦笑を浮かべながらマウスピースをくわえていく。

そして、1ラウンド開始のゴングが鳴り、零子と絵理子は自分のコーナーから飛び出した。

「ほら、行くわよ! レスラーさん!!」

絵理子はそう言うと、零子の顔に左右の鋭いジャブを放っていく。
零子は絵理子のジャブを両腕でガードしたり上体を左右に振ったりしてかわしていくが絵理子のパンチのスピードに苦戦していた。

「くうっ・・・ (なんて速いパンチなの・・・ 反撃できない・・・)」
「ほら、ほら、どうしたのよ!? 反撃してみなさいよ!!」

絵理子は零子の苦しそうな表情にテンションが上がり、それが絵理子のパンチのスピードにも影響してくる。
零子は絵理子の左右のパンチをかわし、右ストレートを放っていく。
しかし、それは絵理子の誘いだったのである。
絵理子は零子の右ストレートをかわすとカウンターの右のショートパンチを零子の顎に叩き込んでいく。

「んあっ・・・」

絵理子の強烈なパンチに零子の口から唾液が吐き出され、しかも、唾液を纏ったマウスピースが空高く吐き出されていく。
そして、零子の身体がリングへと崩れ落ちていく。

「どうかしら? あなたみたいな八百長レスラーにはきつかった??」

絵理子はダウンした零子に対して挑発していく。
レフェリーは絵理子をニュートラルコーナーに向かわせると零子へのカウントを取っていく。

「1・・・ 2・・・ 3・・・」

レフェリーのカウントを聞いた零子はすぐに立ち上がっていくが少し足が震えてしまっている。

「日ノ本、できるか?」
「やれます・・・」

レフェリーは零子が試合続行の意志を示すと試合を再開していく。
試合が再開されると絵理子は一気に零子との距離を詰めていく。
そして、絵理子は凄まじいラッシュをふらついている零子にかけていく。

「んぶぅ・・・ んあっ・・・」
「立ち上がってきたところで、あんたに勝ち目なんてないのよ!! おとなしくKOされてなさいよ!!」

絵理子はそう言うと、さらに零子の顔に左右のパンチを叩き込んでいく。
絵理子が右アッパーを零子の顎に再び叩き込もうとしたところで1ラウンド終了のゴングが鳴り響いた。

「ふん、運が良かったみたいね。 でも、次のラウンドもボッコボコッにしてあげるから」

絵理子はそう言うと、自分のコーナーへ戻っていく。
しかし、その足取りはまったく疲れを感じさせない。
逆に、零子はふらつきながらもなんとか自力で自分のコーナーへ戻った。

「先輩・・・」
「そんなに心配そうな顔しないで、誠ちゃん・・・ 私は絶対負けないわ・・・」

デキシーが的確な処置を施す中、誠は経験不足からか慌ててしまい、セコンドとしての役割を果たせていない。

「零子、聞いてるだけでいいから聞いてちょうだい。 あの白鳥絵理子、本格的にボクシングやっていてプロのライセンスまで持ってるそうよ」

デキシーの言葉に零子は息を荒くしながら自分の考えを言っていく。

「たぶん、白鳥さんは私を倒すためにライセンスを取ったんだと思う・・・ あの人は私がレースクイーンをやってた頃から凄くライバル心剥き出しだったから・・・」
「それで納得がいったわ。 要は、すべてがこの日のためってわけ? どんだけ、執着心持たれてんのよ」

デキシーの言葉に零子は少し笑ってしまう。
そこで、1ラウンド目のインターバルが終わり、2ラウンド開始のゴングが鳴った。

「行くわよ、レスラーさん!!」

絵理子は2ラウンドが開始されるとまたしても一気に零子との距離を詰めていき、左右のフックやアッパーを零子の顔やボディ、脇腹に叩き込んでいく。
零子のガードが下がると絵理子はさらに左右のフックを零子の顔に叩き込んでいく。

「んあっ・・・ んぶぅ・・・ あがぁ・・・」

零子の顔は腫れ上がり、口からは血混じりの唾液を次々と吐いていく。
しかし、零子の目から闘志が失われていないのか、絵理子の隙を狙おうとする。絵理子は零子がそんなことを考えているとは知らず、ひたすら左右のフックで零子の顔を打ち据えていく。

「うぁぁ・・・ ぶふぉ・・・」

零子は無様な呻き声を上げていく。
しかし、そこで2ラウンド終了のゴングが鳴り響いた。
絵理子は零子に向けて放っていたパンチを止めた。
まだ、余裕だという現れだ。

「次のラウンドで一度ダウンさせたげるから覚悟しておきなさい!!」

絵理子はそう言うと自分のコーナーへ戻っていった。
零子もふらつきながら自分のコーナーへ戻った。

「先輩・・・」
「大丈夫・・・ 心配しないで、誠ちゃん・・・」

誠の心配そうな表情に零子は安心させるようにそう言った。
しかし、その目には何か確証があるようにも見える。

「零子、何か考えがあるわけ? やけに、余裕そうだけど」
「はぁ・・・ はぁ・・・ そんなこと・・・ないわ・・・ けど、さっきのラウンドで一つはっきりしたことがあるの」

零子の言葉と表情に誠とデキシーは不思議そうな顔をした。

「白鳥さん、思ったよりもパンチ力がないのよ・・・」
「どういうことですか、先輩?」
「だって、あれだけ一方的に殴ってて彼女の階級なら私なんてとっくにKOしててもいいはずよ・・・ だから、それが答えだよ・・・」

零子の言葉に誠とデキシーは納得したような表情で頷いた。

3ラウンド開始のゴングが鳴り、コーナーから絵理子が飛び出してくる。
しかし、先程の勢いはなくなっているように見える。
零子もゆっくりとだがコーナーからリング中央へ向かう。
そして、また絵理子の左右のパンチが零子の顔やボディに叩き込まれていく。

「あぶぅ・・・ がはぁ・・・」
「そろそろとどめを刺してあげるわ!!」

絵理子は零子の体勢が崩れたのを見て、大振りの右ストレートを叩き込もうとしていく。
しかし、零子は力を振り絞り、体勢を整えると絵理子の右ストレートをかわして、逆に右ストレートを絵理子の顔に叩き込んだ。
絵理子と零子のパンチ力が合わさった威力のパンチが絵理子の顔に突き刺さり、絵理子の身体を吹き飛ばした。

「ダウン! 日ノ本、ニュートラルコーナーへ!!」

零子のカウンターで絵理子は背中からリングに叩きつけられた。
しかし、効いてなどいないと言わんばかりの勢いですぐに立ち上がろうとする。そして、立ち上がった絵理子はレフェリーに試合を続行できるとアピールしていく。

「ファイト!!」

試合が再開されると絵理子はまだふらついている零子との距離を一気に詰め、再び左右のパンチを零子の顔に叩き込んでいく。
またしても、零子の口から血混じりの唾液が吐き出されていく。
しかし、零子も少しずつだが左右のストレートを打ち返していく。

「んぶぅ・・・ あぐぅ・・・ この・・・死に損ないがぁ!!」

絵理子は零子の反撃に強い怒りを示し、さらに零子の顔やボディを左右のフックやアッパーなどで滅多打ちにしていく。
絵理子のパンチが叩き込まれる度に零子の口から痛々しい呻きと血と胃液の混じり合った唾液が吐き出されていく。

「んぶぅ・・・ ぶはぁ・・・ 負け・・・ない!!」
「うっさいわよ、八百長レスラー! 大人しくKOされなさい!!」

絵理子はそう叫ぶと、さらに零子の顔を殴りつけていくと零子の顔がさらに腫れていく。
しかし、零子も左右のストレートを打ち返していくと徐々に絵理子の顔も腫れてくる。

「あがぁ・・・ くふぅ・・・ こ、のぉ・・・」
「はぁ・・・ はぁ・・・ 負けない・・・ 負けるもんかぁ!!」

スタミナの切れ始めた絵理子の顔に零子が右ストレートを放とうとしたところで3ラウンド終了のゴングが鳴った。
零子は絵理子の顔の数センチ前で右ストレートを止めていた。
そして、零子はすぐに絵理子に背を向け、ふらつきながらも自分のコーナーに戻っていく。

「はぁ・・・ はぁ・・・ (何で、あんな死に損ないをKOできないのよ・・・)」

絵理子は乱れた息を整えながら自分のコーナーに戻りつつ、そんなことを考えていた。

零子がコーナーに戻ると誠は氷袋を零子の顔に当てて冷やしていき、デキシーは零子の身体の汗を拭きながら先程のラウンドを見た上での作戦を零子に伝えていく。

「零子、白鳥絵理子はたぶんあんたのことをまだ馬鹿にしてる。 けど、あんた、白鳥絵理子のパンチに慣れてきたでしょ?」
「スピードにはまだ慣れないけど威力には慣れたと思う。 白鳥さんのパンチ力がこれ以上上がるとは思えないからスピードに慣れるまではひたすら耐えるしかないと思うわ」

零子がそう言うとデキシーも頷いた。
誠は二人の話についていけないからと零子のくわえているマウスピースを黙々と洗っていた。

「先輩、マウスピースです。 このラウンドも頑張ってくださいね!」
「ありがとう、誠ちゃん。 もちろん、頑張ってくるよ」

零子がそう言ったと同時に4ラウンド開始のゴングが鳴り響いた。
零子は先程のインターバルで少し体力を回復させたようで勢いよくリング中央へ向かっていく。
絵理子も零子がリング中央に飛び出してきたからとリング中央に向かい、迎え撃とうとする。
またしても、左右のフックやストレートが零子と絵理子の間を行き交う。
零子はシュートもこなすことができるため、ある程度慣れればプロボクサーである絵理子の動きにも付いていくことができるようになっていた。

「はぶぅ・・・ あぶぅ・・・ (何で八百長レスラーのくせに私の動きに付いてこれるの? 不愉快だわ!!)」
「んんっ・・・ んあっ・・・ (行ける・・・ 白鳥さんのパンチはだいぶ見えてきたから喰らったらまずいパンチは対応できるし、パンチ力にも慣れてきた・・・ 絶対に負けない!!)」

零子はそんなことを考えながらも左右のパンチのスピードを徐々に上げていく。
プロレスラーとプロボクサーの違いは試合の時間にある。
プロボクサーは2分1ラウンドの10ラウンドがもっとも長い時間であるが、プロレスラーなら30分一本勝負など長時間での試合なのでスタミナ配分にも違いが出てくる。
ここに来て、絵理子が馬鹿にしていたプロレスの利点が働き出したのだ。
しかし、零子は自身の体力を回復させようと絵理子にしがみついてクリンチに持っていった。
絵理子も思わず受けたダメージを回復しようとそれを受け入れていく。

「はぁ・・・ はぁ・・・ しつこいのよ、日ノ本零子!!」
「えっ、今、名前・・・ ぶふぅ・・・」

絵理子が自分の名前を呼んだことに疑問を持った零子は絵理子に聞き返してしまうが絵理子はクリンチを強引に解いてから腕を振りかぶって右ストレートを零子の顔に叩き込んだ。
不意打ちに近い状態で叩き込まれた絵理子の右ストレートに零子の口からマウスピースがこぼれ落ちた。
絵理子は体勢の崩れた零子の顔やボディに怒涛のラッシュを叩き込んでいく。
しかし、零子もなんとか体勢を整えると絵理子のラッシュをブロッキングやパリングでガードしていく。
そして、お返しにと零子も激しいラッシュを絵理子の顔に叩き込んでいき、右アッパーを絵理子のボディに叩き込んだ。

「ぐはぁ・・・」

絵理子の口から血と胃液の混じり合った滴とともにマウスピースがこぼれ落ちた。
そして、絵理子の身体がリングに崩れ落ちた。

「ダウン! 日ノ本、ニュートラルコーナーへ!!」

絵理子がダウンするとレフェリーは零子をニュートラルコーナーに向かわせてから絵理子へのカウントを始めた。
絵理子はすぐに立ち上がろうとするが身体に力が入らず、なかなか立ち上がれない。

「はぁ・・・ はぁ・・・ (何で、身体に力が入らないのよ・・・ 日ノ本零子になんて負けられないってのに・・・)」
「1・・・ 2・・・ 3・・・ 4・・・ 5・・・」

レフェリーのカウントが続いていく中、絵理子は必死に立ち上がろうとしていく。
しかし、カウントは無情にも8まで数えられていた。

「うあああああっ!!」

絵理子は突然叫ぶと一気に立ち上がっていった。
そして、ファイティングポーズを取り、レフェリーに試合を続けられるとアピールしていく。
しかし、足は震え、視界はぼやけてしまっている絵理子は苦しそうに肩で息をしている。

「ファイト!!」

レフェリーが試合を再開させると零子は絵理子をKOしようと絵理子との距離を縮めていく。
そして、絵理子の顔に左右のフックやストレートを叩き込んでいく。
しかし、絵理子はまたしても零子に抱きつき、クリンチに持っていく。
零子は絵理子の苦しそうな吐息を耳にすると必死に絵理子の身体を離していく。

「んあっ・・・ かはぁ・・・ あんたなんかに・・・」
「私だって白鳥さんには負けない! ううん、負けるもんかぁ!!」

零子はそう叫ぶとガードすることもできなくなった絵理子の顎に下から振り上げた渾身の右アッパーを叩き込んだ。

「ぶはぁ・・・」

絵理子は零子の右アッパーを喰らった衝撃から血と胃液の混じり合った唾液を纏ったマウスピースを上空に勢いよく吐き出した。
そして、絵理子は静かに背中からリングの上に倒れた。

「ダウン!」

レフェリーは絵理子の様子を伺い、試合の続行が可能か確認したがレフェリーは続行不可能だと判断したので試合を止めた。

「試合終了! 勝者、日ノ本零子!!」

リングアナのコールに零子は両手を突き上げていく。
そうして、零子と絵理子の試合は終わった。

その後、絵理子が零子のありもしない噂を広めることはなかった。
しかし、零子へのライバル心は相変わらずで再戦に向けてのトレーニングを始めたとか・・・
また、絵理子と零子の試合を見る日が来るだろう。


Fin

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あきゅろす。
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