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短編小説
予兆
仁盛区は田舎から、閑静な住宅街へと、すっかりイメージチェンジしていた。

五年前、桑山のり夫が衆院選で当選し、公約の公団事業であった北隣区の都市開発が進んだ為だ。

おかげで、昔とは違う高級住宅が増え、田舎町は変貌を遂げた。



仁盛区の北東に、海原公園がある。広さは、大学生が使う野球グランドくらいの広さである。
子供にとっては、かなり広い遊び場だ。

公園には、ブランコが四つ、小さな砂場が二つ片隅にならんである。使用されなくなったプールは一つ北側の入口付近にある。

「いいよな…」

森本庄太は、東坂区にある安価な賃貸マンション
「サンペルージャ東坂」の十階から、海原公園を眺めながら思った。

おっと、説明が遅れたが東坂区というのは仁盛区の東隣にある区の事である。

因みに、「サンペルージャ東坂」の外観はかなりモダンな欧米デザインで、白と黒のレンガ調で出来ていた。

そして、建物の下半分が観葉植物で覆われていて、屋上には何故か長方形の煙突が付いていて、建物全体が不気味な空気を漂わせていた。

そもそも、この地域全体が薄暗く冷たい感じがする。

入居者は、アウトローが多いせいか、見た目通りの危ないスポットになっていた。

時刻は、午後5時30分。夕焼けを眺めていた森本庄太は、早く家に帰りたくなった。

今の仕事をさっさと終わらせてしまおう。

サラ金のダイレクトメールを郵便受けに乱雑に配っていった。



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